『価値づくり』の研究開発マネジメント 第378回
普通の組織をイノベーティブにする処方箋(225): KETICモデル- C:Curiosity(好奇心)(15)
好奇心は何によって生まれるのか(15)
(2026年4月13日)
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前回には、「正の予測誤差を生み出す工夫(その7):常識に反する目標を設定する」を議論しましたが、今回はこの「常識」についてもう少し考えてみたいと思います。
●なぜ「常識」というものが生まれるのか?
「常識」が生まれる理由には、以下の2つがあるように思えます。
○複雑な環境で生きるためのツールが常識
人間は日々複雑な環境下で生活しています。また仕事の場においては、その環境はさらに複雑です。そのような複雑な環境においてサバイブするために、様々な判断を強いられるのが人間です。しかし、そこでいちいち自分自身で真実を追求して真実を確認した上で判断し行動していては、絶対にサバイブできません。そこで、すでに世の中でパッケージ化された「常識」に依存し、判断し行動するということをします。「常識」は複雑な環境下で、サバイブするためのツールが「常識」と言えます。
○他人との効率的なコミュニケーションの手段
また人間は社会の中で、一人では生きられません。他人とのコミュニケーション、インターアクションの中で生活し、生きています。そのような環境で、いちいち一つ一つの概念の定義、その概念が意味するもの、その概念の前提条件から議論していては、関係者の間で限られた時間の中では結論を得ることはできません。そこで、すでに関係者の間での共有された「常識」に基づき議論をすれば、コミュニケーションは大幅に効率化されます。
●「常識」の何が問題なのか?ところが、現実には「常識」は真実とは異なることが多いものです。そのため、「常識」に従って判断し行動し、当初の目的を達せなかった、もしくは本来実現できたことができなかったという問題が生まれます。それでは、なぜ「常識」は真実と異なるのでしょうか? それを考えるために、「常識」がどう作られるのかを考えてみたいと思います。
〇「常識」はどう作られるか?
(1) 一部の特殊な事象から「常識」が作られる
ある限定された特殊な状況において認識された「正しい」ことが、全体化されるということが起こります。なぜなら、全体に当てはまる「常識」を生み出すために、詳細な調査・分析がされることはないからです。
(2) 複雑な事象を効率的に伝えるために単純化される
複雑な構造の中で起こったことをいちいち調査・分析し、それを説明していては、短時間では理解はされません。そこでその構造を単純化し象徴的な部分のみを取り出し単純化して伝えるということが起きます。また単純化の進化形として、ストーリー化があります。多少複雑でも、単純なロジックに基づく説明、すなわちストーリーがあれば、人間には理解されやすいからです。
(3) 「常識」はリスクを避ける方向に偏る人間は、複雑な環境下で生き残るために、現実以上にリスクを過大視するものです。その結果、「常識」はリスクを避ける方向に偏る強い傾向があります。まさに前回のメルマガで三浦雄一郎の富士山のスキー滑走で、「富士山などでのスキー滑走などやるべきでない」という常識です。
(4)ある目的・意図を達成するために「常識」が捏造される
もっともらしいストーリーがあれば、それが事実でなくても人にそれを「常識」として信じさせることはできます。さらにそのストーリーの中に、それを信じることで、自分自身になんらかのメリットがあればなおさらです。メリットは、明確なメリットでなくても、たとえば頭の中もやもやしていたことが明確になりすっきりするなども含みます。宗教をはじめとして、この手法は人類の長い歴史の中で多用されてきました。
(5)影響力のある人間や組織が発信するメッセージは「常識」として定着する
影響力や権威のある人物や組織が発するメッセージは、社会で受け入れられます。なぜなら、多くの人間が、そのメッセージの信憑性をいちいち判断する能力や時間がないので、そのメッセージの信憑性をその人物や組織の権威という代替手段を通して、判断するということが起こるからです。
(6)社会で繰り返し使われると強固な「常識」として固定化するそして、それが事実であるか事実でないかにかかわらず、それが社会の中で繰り返し使われると、覆すことが困難な強固な「常識」として社会の中で固定化されます。
次回も「「常識」の何が問題なのか?」の議論を続けたいと思います。
(浪江一公)
