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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第377回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(224): KETICモデル- C:Curiosity(好奇心)(14)
好奇心は何によって生まれるのか(14)

(2026年3月30日)

 

セミナー情報

 

今回も、正の予測誤差を生み出す工夫について、(その7)として議論をしたいと思います。

●正の予測誤差を生み出す工夫(その7):常識に反する目標を設定する
これまでこのテーマについて富士山登山のアナロジーでお話をしてきましたが、冒険家の三浦雄一郎は、1966年に標高3,776メートルの富士山の頂上からスキー滑走という、「世の常識に反した」行動を行い成功させました。そして、この成功は三浦雄一郎の好奇心をさらにかきたて、その後よりリスクの高いエベレストのスキー滑降に結び付いていきます。

ここで、富士山のスキー滑降の成功が、三浦雄一郎のエベレストのスキー滑降というさらなる好奇心をかきたてた理由が、まさにこれまで議論してきた下の式で表された予測誤差(正)が生まれ、そこでドーパミンが分泌されたからと考えることができるのではないかと思います。

実際の達成値(高)-期待値(中)=予測誤差(正)

そこで、今回は正の予測誤差を生み出す工夫(その7)として、「常識に反する目標を設定する」を議論したいと思います。

〇なぜ「実際の達成値」が(高)なのか?
まず「常識に反する目標を設定」すると、なぜ「実際の達成値」が(高)であるということが起こるのでしょうか?

-世の中には誤った常識が沢山ある
私はこれまで長い人生を歩んできましたが、世の中には誤った常識が思った以上に沢山あるというのが実感です。特に、複雑化する現代において、その傾向は益々増えているように思えます。

-人間は自身の思考の面倒を避け「常識」に基づき行動しようとする生き物
人間はそもそも面倒を嫌う生き物です。ですので、思考においても少しでもわかりにくいと、自分自身での思考を拒否してしまします。そこで、自分で未経験のことをしようとする場合、世の中で「常識」と考えられていることで自分自身の意思決定を代替しようとします。

-人間は「常識」を捏造する生き物
また人に何かメッセージを伝えたい場合、上で議論したように人間とは「常識」に基づき思考・行動する生き物であるので、人が瞬時に理解できるようなシンプルなもっともらしい理屈、すなわち「常識」を意図しているかどうかにかかわらず、創り出す(捏造する)ということが起こるのです。

-世の中には達成が実際はより容易ながら、誤って難しいと考えられていることがごまんとある
このようなプロセスで作られた常識の多くが、実際にはそうでなくても「不可能である」とか「難しい」というメッセージを発していることは多いものです。そのため、実際にやってみると世の中の常識より容易にできた、ということが起こることになります。

〇なぜ「期待値」が(中)なのか
それでは次に、なぜ「期待値」が(中)なのでしょうか?

常識は世の中や組織の中で多くの人が正しいと考えられていることですので、人間は新しい取組みをしようとした時には、やはり常識に一理あるかもしれないと誰しも思ってしまうものです。それほど「常識」は強力です。そのため多くの場合、期待値が取組み以前に(高)となりません。せいぜい(中)、場合によっては(低)かもしれません。

以上の結果、予測誤差は(正)となり、「行動と結果を結ぶ神経回路が強化」(第367回参照)され、好奇心が生まれると考えます。そして、このようにして「常識」に反することで生まれてきた人類の好奇心が、今の文明を創ってきたと言えます。

(浪江一公)