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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第376回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(223): KETICモデル- C:Curiosity(好奇心)(13)
好奇心は何によって生まれるのか(13)

(2026年3月16日)

 

セミナー情報

 

私自身、あらためて、日々の生活の中で、前回議論した「正の予測誤差を生み出す工夫(その6):当初の目標が達成できなくてもリフレーミングする」が重要だな、と思うことがありました。今、議論している好奇心だけに貢献するものではありませんが、今回もこのテーマで議論を続けていきたいと思います。

●正の予測誤差を生み出す工夫(その6):当初の目標が達成できなくてもリフレーミングする(続き) 

〇私の友人の父親の話:2つのリフレーミング

先日私の友人と話していて、彼女のお父さんの数奇な人生の話を聞き、あらためてこのフレーミングの重要性に気が付きました。彼女のお父さんは、戦前の満州に生まれ、裕福な家庭でお坊ちゃんとして甘やかされて育てられました。しかし、終戦直前、突然ソ連軍が満州に侵入し、それまでの彼の生活は一変します。彼の家族はソ連軍を逃れ、満州をさまよい歩くのですが、その過程で彼は中国共産党の八路軍に囚われの身となり、10代の彼は八路軍で厳しい労役を課せられるという日々を送ることになります。しかしその八路軍での彼は、厳しい境遇にも関わらず、絶対に生き残ってやると決心し(まさに厳しい境遇のリフレーミング‐その1)、1年後八路軍をなんとか逃げだし、結果的に無事日本に戻ることができました。

その後、長い月日が流れ、彼は日本で家族を持ち、そして名古屋に住むようになりますが、そこで伊勢湾台風に遭遇します。伊勢湾台風は1959年に発生した巨大台風で、愛知県・三重県を中心に死者・行方不明者5000名、負傷者4万人、家屋被害80万戸という甚大な被害を及ぼしました。彼の家も、二階に届くような洪水に遭います。しかし、そのような状況の中でも、彼はどこからか、水に溺れて死んだ鶏を見つけてきて、その鶏を水炊きにし、それを囲んで家族皆で美味しい夕食を楽しんだそうです(まさに厳しい境遇のリフレーミング‐その2)。その後もこの伊勢湾台風の中での出来事は家族の語り草になり、家族の間で長い間言い伝えられてきたそうです。

その他、様々な逆境の中でも(たとえば他の人に随分遅れて大学に入学するなど)、物事を前向きにとらえるという考え方を身に付けた彼は、最終的にある有力国立大学の教授になることもできました。

〇リフレーミングの効果は、必ずしも人生おける激変遭遇時だけではない

上の話を聞いて、彼がリフレーミングできたのも極限状況に遭遇したから、と考える人もいるかもしれません。たしかに、彼の場合で言うと、そういう面はあるかと思います。しかし、日々大小様々の事態に遭遇するのが我々であり、事態の大小にかかわらずそこにはリフレーミングの効果があるのですから、リフレーミングの経験をそこに活かさない手はないように思えます。

〇何がリフレーミングしようとする気持ちをもたらすのか?

何がリフレーミングしようとする気持ちをもたらすのでしょうか?私はそこには大きく三つの要因があると思います。第一は、人間は皆だれしも「生き残ろうとする本能」を持っている事実です。もちろん上の例のように極限状況はめったに起こりませんが、自分の幸福な人生を阻害するようなことは、黙っていても日々たくさん起きます。そこで、我々人間はリフレーミングするようにできていると、強く思うことによりリフレーミングができるように思えます。第二は、自分の人生の主役は自分であるという強い感覚を持つことです。その状況自体はすでに起こってしまっていることですので、変えることはできません。しかしその状況を主役として、自分にとって益のあるものとしてとらえること、すなわちリフレーミングすることは、自分がコントロールできることです。第三は、リフレーミング思考を習慣化することです。リフレーミングを数多く経験することで、ポジティブな効果が得られます。そのようなポジティブな効果の経験を重ねることで、リフレーミングが習慣化されます。そのため、日々何度も行う自分自身の意思決定の中にリフレーミングを組み込むことを常に課すということかと思います。

(浪江一公)