Top
> メルマガ:『価値づくり』の研究開発マネジメント

 

『価値づくり』の研究開発マネジメント 第372回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(219): KETICモデル- C:Curiosity(好奇心)(9)
好奇心は何によって生まれるのか(9)

(2026年1月13日)

 

セミナー情報

 

現在「好奇心は何によって生まれるのか?」というテーマのもと、正の予測誤差を生み出すための工夫について議論しています。今回はその第3の方法である「最終目標に至る中間目標を設定する」について考えていきます。

●正の予測誤差を生み出す工夫(その3): 最終目標にいたる中間目標を設定する

最終的に到達したい大きな目標(例:富士山10合目)に向かう際に、その手前の段階に到達可能性の高い中間目標(例:5合目)を設定する方法です。この“段階構造”が好奇心や行動意欲を生み出す重要なメカニズムとなります。

〇第1ステップ:最初の動機付け
中間目標(5合目)は最終地点ほど魅力的な景色は望めないと予測されるため、

期待値(低) × 達成可能性(高)=ワクワク感(低)

となり、単体ではワクワク感が弱いかもしれません。

しかし、その先にある10合目という“高期待値”の最終目標の存在が、行動開始の動機を支えます。中間目標はあくまで「通過点」ですが、それを越えた先に得られる大きな報酬(壮大な景色)があると分かっていることで、行動のエネルギーが生まれます。

〇第2ステップ:学習(正の予測誤差を生み出す)
中間目標はもともと期待値が低く設定されています。そのため、
実際の達成値が予想より良かった(例:思ったより景色が良かった)となる可能性は高くなります。すなわち、
→ 正の予測誤差が生じる
これを式で示すと:

実際の達成値(高) − 期待値(低)=予測誤差(正)

この予測誤差が、“やってみたら意外と良かった”という感情を生み、次のステップへ進む心理的なドライブとなります。

〇第ステップ3:次の動機付け
中間目標を達成したことで、
・最終目標の達成可能性(高)(←残り半分(だけ)ということで、達成可能性が高まります)
・最終目標に対する期待値(高)
が両立し、
期待値(高)×達成可能性(高)=ワクワク感(高)
となります。

これは、最終目標(10合目)に向かう強い動機付けを生み出します。

〇金融工学のリアルオプションとの関係
この方法(とくに第1・第3ステップ)は、金融工学でいうリアルオプションの考え方に近いものです。
リアルオプションとは、「段階的な投資を通じて、不確実性を減らしながら最終判断を行う」手法です。

・まずは小さなリスクで中間目標に挑戦(段階的投資)
・達成できた時点で、より大きな最終目標へ挑む(不確実性の縮約)

つまり、いきなり大目標に大きなリスクを背負って挑むのではなく、中間目標の成功によってリスクを下げながら進めるという点が一致しています

〇前回議論した「(その2):高い期待値を持つ目標を分割して設定する」との違い
今回の(その3)は前回の(その2)に似ていますが、構造が異なります。

(その2←前回):一つの大目標 → 複数の小目標に分割
• 例:A大学合格 → 英語、国語、数学など科目ごとの目標
• “並列の複数目標”に分割するイメージ

(その3←今回):一つの大目標 ← 段階1/段階2/段階3 ……
• 例:第1回模試、第2回模試…のように時間的
• 段階的なプロセスを設定• 段階を順に登ることで最終目標に近づく
• “連続的プロセス”で構成される点が特徴

両者は似ているようで、前者は“目標を分割する”方法、後者は“道のりを段階化する”方法という違いがあります。

(浪江一公)