Top
> メルマガ:『価値づくり』の研究開発マネジメント

 

『価値づくり』の研究開発マネジメント 第370回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(217): KETICモデル- C:Curiosity(好奇心)(7)
好奇心は何によって生まれるのか(7)

(2025年12月8日)

 

セミナー情報

 

現在「好奇心は何によって生まれるのか?」の議論をしています。その中で前回から、「ステップ2:学習」において正の予測誤差を生み出すにはどうしたら良いかを考えていますが、今回もその議論を続けたいと思います。

●正の予測誤差を生み出す工夫(その1):これからする行動に対し低い期待値をもつ目標を複数、束で設定する(続き)

それでは複数の目標には、どのようなものがあるのでしょうか?

〇複数の目標とは
私は目標の設定にはその行動のそもそもの達成期待目標(主目標)以外に、3つの分野があると思います。
-主目標以外の副次的目標
-達成感の獲得
-行動を起こした自分への賞賛(仮に期待成果が得られなくても)

〇主目標以外の副次的目標

米国のイノベーションマネジメントで有名な3Mでは、自社のプットフォーム技術を使って、数多くの製品を展開するという活動を行っています。その主目的は、自社の強いプラットフォーム技術を使って顧客価値が高く、かつ競争力の高い製品を出すことです。しかし、それら主目的はいつも達成できるとは限りません。3Mでは、仮にこの主目的が達成できなくても、そのプラットフォーム技術を使って新しい製品を出すことにより、そのプラットフォーム技術を強化することができると考えています。つまり転んでも(主目的達成が失敗しても)、タダでは起きないということです。このような前提がありますので、社内で多いにプラットフォーム技術の活用に取り組めるのです。

ですので、何か新なチャレンジングな行動を起こす場合、主目標以外の副次的な目標がないかどうかを考えてみることで、その行動を促進することができます。この考え方は、私の日々の生活や仕事の中でも実践しています。

私の卑近な例で恐縮ですが、私は食後の血糖値スパイクを避けるために、スクワットなどの体操を食後にすることをしています。ところが血糖値スパイクを避けるという理由だけでは、その食後の体操を続けることは困難です。そこで、私はサイクリングが趣味なので、サイクリングのための下半身の筋力強化という副次的な目的を付加しています。そのため、幸いこの体操を継続することができています。

〇達成感の獲得

誰しも何等かの行動を起こして、特にそれがチャレンジングであればあるほど、達成した場合、達成感を感じるものです。しかし多くの場合行動を起こす時点では、あまりそこから得られるであろう達成感を意識していないのではないかと思います。

しかし、行動を起こそうとする時点で、主目標や副次効果が達成された暁に感じられるであろう達成感を強く意識することで、行動が促されると思います。ここでの工夫は、その達成感をできるだけ具体的にイメージしてみることです。たとえば、会社の上司や同僚から賞賛されている自分をイメージする。同窓会で同級生から祝福される自分をイメージするなどです。

〇行動を起こした自分への賞賛(仮に期待成果が得られなくても)

行動がチャレンジングであればあるほど、ここまで挙げた期待成果を上げることが、いつもできるわけではありません。仮に期待成果が得られなくても、行動を起こした自分への賞賛をすることで、実際の達成値を高めることができます。

これは上で議論した「達成感の獲得」と同じと思われるかもしれませんが、本質的に異なる点があります。それは、上の「達成感の獲得」は、かならず主目標か副次的目標が達成できなければなりませんが、「行動を起こした自分への賞賛」は、主目標や副次的目標が達成できなくても、自分の考え方次第でできるということです。

(浪江一公)