『価値づくり』の研究開発マネジメント 第368回
普通の組織をイノベーティブにする処方箋(215): KETICモデル- C:Curiosity(好奇心)(5)
好奇心は何によって生まれるのか(5)
(2025年11月17日)
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今回も、前回に引き続き「好奇心は何によって生まれるのか?」の議論を続けていきます。前回(第367回)の最後の「〇次の動機付けを生み出すためのトリガーの必要性(その1)」について、3つのトリガーをあげましたが、今回はその議論をしていきたいと思います。
〇次の動機付けを生み出すためのトリガー(その1):関連する新しい情報に遭遇
たとえば、「この材料を調味料に使ってみよう」という最初の動機付け(第1ステップ:最初の「動機付け」)に基づき行動し、その結果「この材料を調味料に使うと、こんなに味が良くなるんだ!」という学習(第2ステップ:学習)をすると、料理の味を良くする材料を「他にも」試したくなるという気持ちの上での「下地」や「基盤」が作られます(第3ステップ:次の動機付けの「前半部分」)。
そこになんらかのきっかけで、新しい調味料の材料の候補に遭遇すると、その遭遇がトリガーになり、「これって調味料に使えるかもしれない」と考え、そこでドーパミンが分泌され、「この材料を試してみる」という次の動機付けがうまれ、そして次の行動、すなわちその調味料を試すという行動にいたるというものです。このように、新しい調味料の材料の候補という「関連する新しい情報に遭遇」することが、次の動機付けとなるのです。
このように関連する新しい情報への遭遇が、次の動機付けを生み出すので、関連する新しい情報に遭遇する機会を意図的に増やせば、次の動機付けも増えるわけで、この点が重要となります。この議論は、極めて大事ですので、回をあらためて議論をしたいと思います。
〇次の動機付けを生み出すためのトリガー(その2):「そういえば・・・」と過去の記憶からの想起
次のトリガーが「そういえば・・・」と過去の記憶からの想起です。調味料の新しい材料の候補に遭遇するのではなく、なんらかのきっかけで、自分の過去からの記憶で「そういえば、調味料として使えそうなAといういい材料があったな」と想起すると、「これって調味料に使えるかもしれない」と考え、どこでドーパミンが分泌され、「それじゃ、Aを試してみる」という動機付けが生まれ、実際の行動、すなわちその調味料を試すという行動にいたるというものです。
誰しもこれまで何十年も人生を歩んできているわけで、本人が明確に認識している、していないにかかわらず、自分の脳の中にはすでに遭遇済の膨大な大小様々な関連する経験が記憶されているはずです。その量は、上の「(その1):関連する新しい情報に遭遇」で今後遭遇するかもしれない経験より遥かに多く、そしてすでに自分の頭の中のそこにきちんと存在するものです。これを活用しない手はありません。
〇次の動機付けを生み出すためのトリガー(その3):他者からの共感、承認、フィードバック
3つ目のトリガーが、他者からの共感、承認、フィードバックです。「この材料を調味料に使うというアイデアはいいね」、「こんな材料も調味料として使えるんじゃない?」などの他者からの共感、承認、フィードバックを得ると、「他にもいろいろ良い材料がありそうだ。探してみよう」という考え、そこでドーパミンが分泌し、それを実際に試してみるという行動が生まれるというものです。
フィードバックに関しては、ここで重要な点があります。それは、フィードバックがネガティブなものであっても、本人の捉え方によって、ドーパミンを分泌させ、次の行動の動機付けとすることができるということです。「そんな材料で作った調味料などまずいに決まっている」、「そのアイデアは既に〇〇さんが考えたもので、二番煎じだ」といったネガティブなフィードバックでも、「なに言ってんだ!見返してやる!」と考えることで、脳内神経伝達物質を分泌させ、次の行動の動機付けとすることができるというものです。ネガティブなフィードバックにシュンとなって萎縮しないという本人の考え方・姿勢をもつことで、次の前向きな行動を促すための動機付けとすることができるのです。
(浪江一公)
