『価値づくり』の研究開発マネジメント 第367回
普通の組織をイノベーティブにする処方箋(214): KETICモデル- C:Curiosity(好奇心)(4)
好奇心は何によって生まれるのか(4)
(2025年11月4日)
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今回も、前回に引き続き「好奇心は何によって生まれるのか?」の議論を続けていきます。
●好奇心は何によって生まれるか?(その1):好奇心の結果が自分にとって広い意味で価値を生み出すこと(その4←前回からの続き)
前回から、神経物質のドーパミンの好奇心との関係性を議論していますので、以下にその議論を続けます。
●脳内の神経伝達物質(その1):ドーパミン(2←前回からの続き)
〇ドーパミンによる「動機付け」→「学習」→「動機付け」の循環
-第1ステップ:最初の「動機付け」(続き)
前回のメルマガで、ドーパミンは「これをすれば良いことが起こるかも」と予想や期待した瞬間に分泌される、と説明をしました。この最初のドーパミンの分泌により、やる気やワクワク感が生み出され、そして実際に行動がなされます。これがドーパミンの1つ目の効果、「動機付け」です。
-第2ステップ:学習
次に第1ステップ:最初の「動機付け」により、実際に行動が起こります。そしてその行動の結果「思ったよりうまくいった!」という予想外の成功、すなわち正の予測誤差が生まれると、ここで追加的にドーパミンが分泌され、このドーパミンの分泌により、行動と結果を結ぶ神経回路が「強化」されます。この2回目のドーパミンの分泌が2つ目の効果、「行動と結果を結ぶ神経回路の強化」を生み出します。
-第3ステップ:次の「動機付け」
そして、その結果、脳の中に「もっと知りたい」、「もっと調べたい」という3つ目の効果(気持ちの状態)が生まれ、次のさらなる「動機付け」を生む「下地」、「基盤」になります。
それでは、行動の結果が「思った通りだった」、すなわち正の予測誤差が生まれなかった場合はどうかというと、行動と結果を結ぶ神経回路は「安定化(固定化)」するだけで、「もっと知りたい」、「もっと調べたい」という次のさらなる「動機付け」を生む下地や基盤は作られません。もちろん「安定化」には大きな価値、すなわち次回から脳は少ないエネルギーでその行動を再現することができるという価値があるのですが、この部分には、今議論しているドーパミンは関与しません(別の神経ホルモンが関係します)。
〇次の「動機付け」を生み出すためのトリガーの必要性
ただし、正確に言うと、あくまでこの段階では、脳の中に「もっと知りたい」、「もっと調べたい」という気持ちの状態、すなわち「下地」、「基盤」が作られるだけで、すぐに「次の動機付け→行動」が始まるわけではありません。あらたにドーパミンを分泌し、実際の次の動機付けを生み出すには、トリガーが必要になります。
-3つのトリガー
トリガーには以下の3つの種類があるように思えます。
関連することについて;
・新しい情報に遭遇
・「そういえば・・・」と過去の記憶からの想起
・他者からの共感、承認、フィードバック
次回もこの議論を続けたいと思います。
(浪江一公)
