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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第355回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(202): KETICモデル-思考(144)
「発想のフレームワーク(79):隣接可能性とは(7):隣接可能性促進法(5)」

(2025年5月12日)

 

セミナー情報

 

今回も前回に引き続き、隣接可能性を促進する方法として、マインドマップの活用について議論をしていきたいと思います。

〇マインドマップ(続き)
-生成AIツールを利用して、マインドマップを作成する
前回までの議論から、すでに多くの方が気付いていると思いますが、マインドマップ作成に生成AIのツールを使わない手はありません。生成AIツールは、複数メンバーどころか過去の人間も含め数十億人が創出してネット上に置いている膨大な情報の中から、マインドマップを自動的に作成してくれます。「〇〇を、マインドマップの形で整理してください。」と入力するだけで、マインドマップをほんの数秒でそれも無料で作成してくれます。加えて、人間がどんなに時間を掛けても、ネット上の全ての情報を読むことはできませんので(現実には生成AIは全てのネット上の情報を利用している訳ではありませんが)、その網羅性を含めて人間にはとうてい作成不可能なレベルのマインドマップを作成してくれます。まさに生成AIは、隣接可能性やイノベーションを促進する上で、革命的な技術と言うことができます。

また人間が作成したマインドマップにしても、生成AIで作成されたマインドマップにしても、一度作成したマインドマップを、生成AIを利用して効果的・効率的にそれを拡大することもできます。たとえば、すでに作成済のマインドマップに載っているキーワード(たとえば□□)に関し、そこから自分で情報を付加して「□□を△△の視点から、マインドマップ(正確には全体のマインドマップの一部のサブマインドマップ)を作成してください。」と指示すれば、その部分のマインドマップを作成してくれます。

ただし、人間の脳の中に蓄積された情報のごく一部しかネット上には存在しませんし、また上でもコメントしましたが、生成AIは全てのネット上の情報を利用しているわけではありません。また、実際にやってみるとわかるのですが、生成AIが作成したマインドマップも完璧なものではありません。また仮に生成AIが作成してくれたマインドマップが現時点で完璧(完璧とは何かは曖昧ですが)なものであったとしても、より良いものにすることは常に可能です。なぜなら知識は静的なものではなく、常に進化していく動的なものであるからです。

ですので、まさにそこから隣接可能性を利用して、これまで他人が考えなかったようなことを、「皆さんの頭」で思考をすることができます。なぜならそこには先人が考えた英知に基づく生成AIを活用して作成した「その時点で」の最高峰のマインドマップが目の前にあるのですから、そこに自分の知恵を付加するだけで、これまで世界に存在しなかったその先を行く最先端のマインドマップを作成することができるのです。ニュートンの言葉として「もし私がより遠くを見渡せたとするならば、それは巨人たちの肩の上に立っていたからです」が有名ですが、まさに生成AIが作成したく「その時点で」の最高峰のマインドマップの上に立って、さらにそこからより良いマインドマップを作成することができます。それこそがまさに隣接可能性の価値であり、それこそがまさにイノベーションです。

そのため、生成AIツールは極めて有効なツールですが、マインドマップ作成の万能のツールではありません。生成AIが作成したマインドマップには、上で説明したようにおおいに改善・拡大の余地があります。もしそれが万能のツールであり、またその結果の生成物が完璧なものであれば、他の人も簡単にかつ瞬時に同じ完璧なマインドマップを手に入れることができますので、もはやイノベーションの余地はありません。なぜなら、これまで何度も述べてきましたが、私はイノベーションを「今まで存在しなかった大きな価値を創出すること」と定義していますので、他の人も簡単にかつ瞬時に同じ完璧なマインドマップを手に入れることですので、すぐに「存在」してしまうからです。

ですので、生成AIをどんどん活用しマインドマップを作成し、またそこに自分のアイデアを付加し、また自分のアイデアを創出する過程でもマインドマップを活用して、より発展したものにしていくという活動をセットで行うことが極めて重要です。

(浪江一公)