『価値づくり』の研究開発マネジメント 第353回
普通の組織をイノベーティブにする処方箋(200): KETICモデル-思考(142)
「発想のフレームワーク(77):隣接可能性とは(5):隣接可能性促進法(3)」
(2025年3月31日)
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今回も前回に引き続き、4つの「意図的に隣接可能性を促進する方法」の1つ目として「既存のニューロンに蓄積された個別の情報を出発点に連想を促す」方法のうち、マインドマップについて考えていきたいと思います。
〇マインドマップ(続き)
-個人の作業(時間差)
人間の脳は、いつでも100%効率的に機能する訳ではありません。その時のエネルギーレベル、関心、気分により連想される脳内の情報が左右されることは多いものです。また思考を長く持続させることはできません。数十分で頭が煮詰まってしまいます。研究によると、15分から50分で思考能力は低下するそうです。
一方で、エネルギーレベルが高い状態、頭の回転が速くなります。また、新しい情報に触れた後では、異なる連想が生まれやすいと思います。
マインドマップなどを利用することで、エネルギーレベルが下がってきても一度これまでの思考を図にきちんと表しておき、その図を時間差をもって後に、エネルギーレベルの高い時、異なる心理状況にある時に見直すと、隣接可能性を利用して、そこからさらに異なる連想を生み出すことができます。一方で、図にきちんと表しておかないと、せっかくのそれまでの体系的な思考の結果が、記憶のかなたに消えてなくなってしまいます。
必ずしもマインドマップの利用時だけではありませんが、なんらかの形でとにかく一度形にするというすべての活動に共通ですが、この時間差の効果は抜群で、私は多用しています。一度それまでの思考を図として表し、別のタイミングで何度も書き直すということで、内容が短期間の間におおいに向上する効果があります。
-複数メンバーでの作業このような活動は、個人の情報に基づくものや個人の連想だけでは限定的です。他のメンバーの頭の中に蓄積された情報を活用できれば、マインドマップの樹は何倍にも広がります。またマインドマップは複数メンバーで皆で同じ図を共有し見ながら、連想作業を行うには最適なものです。
複数のメンバーで作業を行う時の課題は、その時点で皆のエネルギーレベルを高く維持することです。個人の単位であれば、自分で「がんばろう」と思うことで、ある程度エネルギーのコントロールができますし、「ちっと今は頭がつかれているな」と思えば、別の機会に作業をするということは、かなりフレキシブルにできます。しかし、複数のメンバーによる場合には、個人レベルに比べ、制約は多いものです。
メンバーのエネルギーレベルを高めるためには;
・なぜそのような議論が必要なのか、その議論の目的およびその価値を明確にしておく
・マインドマップの利用法を含め、議論のルール・方法を皆で共有しておく
・わくわくする議論にする工夫をする
そのために、以下の点に気を付ける
・メンバーを多様性のある人から構成し、サプライズの機会を増やす
・様々な意見、突飛な意見を歓迎し、楽しむというルールを伝える
・メンバーの人選を適正に行う
シニカルな人、批判的な人、自分勝手な人、うぬぼれが強い人、権威的な人は避ける。
・リラックスした雰囲気・環境を作る
無味乾燥な部屋ではなく、観葉植物や壁紙、家具、照明などの工夫により、リラックス雰囲気を作る。また、飲食などを自由にしながら議論をする。
・休憩時間を頻繁にとる
・出されたアイデアを皆でほめる
次回もこの議論を続けていきます。
(浪江一公)