『価値づくり』の研究開発マネジメント 第337回
普通の組織をイノベーティブにする処方箋(184): KETICモデル-思考(126)
「発想のフレームワーク(69):思考の頻度を高める方法(39) 妄想のすすめ(9)」
(2024年8月20日)
今回も引き続き「妄想を積極的に促す方法」について、考えてみたいと思います。
●妄想を積極的に促す方法(その17):妄想を得意とする身近な人の思考・行動を知る
皆さんがこれまで出会ってきた人の中には、妄想を得意とする人がいるのではないかと思います。私にも、数は大変限られていますが、妄想の得意な人を同僚や友人にもった経験があります。これまで「妄想を積極的に促す方法」を数多くあげてきましたが、まさに彼らはこれらの特質を強く持っている傾向があります。
私のかつての同僚で、その後彼はその当時はめずらしい業種のベンチャー企業を立ち上げ、さらには私がその会社に転職して一緒に数年ですが、社長・部下の関係で仕事をした経験があります。(かれはその後、そのベンチャー企業のIPOを成功させ大金持ちになりました。残念ながら、私はその恩恵に浴することはできませんでしたが(笑)。)
彼の思考や行動を見てみると、常日頃からさまざまなことに広く関心を持つということがありました。また普通の人から見ると軽率に思えること、そして実際に軽率なことにも、あまりその結果を深く考えずに行動にうつす。そのため、人から軽率なある意味ルーズな人間と思われていることもあります。そして、それら軽率な行動の結果大きな失敗を含め、失敗を沢山する。その失敗は時に他人や会社に迷惑をかけることもありますが、憎めない性格で、ひどくは非難されません(もともと彼は、他人を悪く思ったりすることがないようで、私は彼が他人の悪口を言ったことを聞いたことはありません)。ただし、そのような性格なので、彼は日本の歴史のある有名大企業では、あまり出世はしていなかったと思います。また彼は難関大学を出ているものの、決して頭の回転の速いスマートな人間ではありません。
今この文章を書いていて、気がついたことがあります。この人は一緒にある会社の社外役員を経験した方です。その人は既にある分野で相当有名な人なのですが、極めて優秀な方ですが、まさに同じような思考、行動、性格を持っています。彼は自分自身この点(自分自身のネガティブな面)を理解しているようで、ある経済誌の中でそれを認めているようなことを語っています。
皆さんの仕事や私的な関係でも、多かれ少なかれこのような人がいると思います。このような身近な人からその思考や行動を学ばない手はありません。私も今振り返ってみると、長年最初に挙げた同僚を自分のロールモデルと考え、自分の思考や行動の大いなる参考にしてきたように思えます。
●妄想を積極的に促す方法(その18):妄想を得意とする有名人の思考・行動を知る
上の妄想を積極的に促す方法(その17)では、「妄想を得意とする「身近な」人の思考・行動を知る」と述べました。しかし、現実には身近な人では妄想の得意な人に遭遇する可能性はあまり高くはありません。また、脳科学者の中野信子によると、日本人は歴史的にも妄想を得意とする人が少ないという事実もあるようです。
そうであれば、身近でなくても、古今東西の妄想の得意な有名人の思考や行動を知るということがあると思います。そのような人としてすぐ思い付く有名人として、イーロン・マスクがいます。ご存知の通り、大きなリスクをとって世の常識を打ち破りEVメーカーであるテスラ―・モータースや宇宙ビジネスのスペースXを立ち上げた企業家です。彼の思考・行動特性・性格を調べてみると、興味や関心が多面的(さまざまな分野の事業に取り組んでいる)、理論的でありながらも直観を重視する、すぐ大胆な行動を含め行動に移しそこから学ぶ、しばしば物議を醸す行動や発言をする、ユーモアや遊び心を大事にする、など上でも議論した特性を非常に強く持つことがわかります。
イーロン・マスクのような人間を真似することは、難しいことではありますが、自分の思考や行動の参考とすることでも大きな意味があると思います。
(浪江一公)