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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第328回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(175): KETICモデル-思考(117)
「発想のフレームワーク(60):思考の頻度を高める方法(30) 思考の扉を増やす(8)」

(2024年4月8日)

 

セミナー情報

 

前回は無生物の物に自分がなったと想像、妄想することで、自分自身の体験が拡大し、スパークの頻度が高まるという議論をしました。今回は、もしそうであれば、物理的に存在しないような無形で抽象的なもの、たとえば技術や思想、その他のものも、擬人化し自分自身がそれに乗り移り、体験を拡大することができるのではないかについて考えてみたいと思います。

●AIという技術を擬人化してみると
たとえば今、議論になっているAIといった技術も、擬人化して考えることができるように思えます。人類に破壊的な結果をもたらす怪物として、その逆の人類の多くの問題を解決することができる女神として、もしくはその両面を持つ全知全能の神などのイメージです。

自分が全知全能の神、AIに「なった」と考えて見る。具体的には、何をすることができるのか?全知全能の神でも、できないことがあるのか?といったことです。もちろんこの質問は、自分がAIにならなくても考えようとすることは可能ですが、より主体的に考えてみることで、思考の拡大ができるように思えます。

●無形で抽象的なもの、すべてが擬人化できる
それでは無形で抽象的なものは、どのようなものであれば、擬人化することができるのでしょうか?人間や人間の営みに直接・間接に影響、すなわちPainやGain、そしてもっと微妙な心理に影響を与えるものを含めて、人間に大なり小なり関係するもの、しそうなもので名前の付けられるものすべてが擬人化できると思います。技術、思想、知識、学問、自然現象、自然環境、都市環境、心理状況、世の流行、音楽・・・すべてです。世の中には、まさに人間は世の中に存在しているので、人間に直接・間接に関係しないものはありません。ですので、無形で抽象的なもの、すべてが擬人化できます。

たとえば、自然現象で言えば、イタリアの画家のボッティチェリの描いたビーナスの誕生という絵には、風が擬人化され、ビーナスに息を吹きかける人物として描かれています。またイソップ童話の北風と太陽では、良く北風と太陽が擬人化された絵として登場します。

●擬人化できれば、それに乗り移ることができる
そして擬人化ができれば、それに自身が乗り移り、その擬人化したものを「主体」として経験することができます。

●そもそも「擬人化+乗り移り」のイノベーションにおける効果は何なのか?
私たちは日々様々なものを観察する機会があり、また客体として様々なものから影響を受動的に受けるということをしています。しかし、それらの観察の対象や客体としてではなく、その対象である主体になったと想像・妄想してみると、まったく違う世界が見えてくるのではないでしょうか?

たとえば自分が風になったと考えてみる。自分が空を飛んでいて、眼下に見える海上の帆船に息を吹きかけると、船は勢いよく海上を遠くに向かって疾走し、いつか視野から消えてしまう。といった情景を想像することができます。

まさに妄想以外のなにものでもありませんが、このように妄想した体験や情景は頭の中に蓄積され、後のイノベーションを起こすためのきっかけや知識になりえます。また何が良いと言って、妄想はただです。また、どんどん妄想することで、頭の中に様々な体験や情景か数多く蓄積させることができます。

●「擬人化+乗り移り」は簡単にできる
すでに客体として、もしくは観察者として対象のものの知識があるので、そこから類推して主体の気持ちを妄想することはそれほど難しくはありません。また場合によっては、主体を実際に代替するものが存在し、それらについての知識を利用することができます。たとえば、上の音楽の場合では、音楽に乗り移り、たとえば人々を楽しませている時の気持ちや映像は、楽器の演奏家の気持ちや映像を類推することで、想像・妄想することができます。

加えて、そもそも妄想なのですから、なんの制約もありません。自由に勝手に考えて良いので、誰にでもできることです。

(浪江一公)