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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第319回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(166): KETICモデル-思考(108)
「発想のフレームワーク(51):思考の頻度を高める方法(21) 体感で思考する(5)」

(2023年11月27日)

 

セミナー情報

 

現在「体感で思考する」をテーマに議論をしていますが、今回からは体感での思考とアナロジーとの関係を考えてみたいと思います。

●アナロジーとは
アナロジーとは説明しにくい物や事を説明する場合に、すでに知っている他のもっとわかり易い物や事になぞらえて説明するものです。 たとえば蜘蛛の巣を説明する場合に(蜘蛛の巣を見たことの無い人を対象にと仮定して)、蜘蛛の巣は魚の網にとりもちがくっついているようなもの、など、その人がすでに知っていると思われるものを例に説明するといったことです。

●アナロジーの発想法への利用
しかし、アナロジーは説明しにくいものの説明以外に、発想法としても活用できます。蜘蛛の巣の例で言うと、バイオミメティクスという概念がありますが、これは植物や動物の構造を利用して有用な材料やものを創出しようというものです。たとえば、蜘蛛の巣の特徴から何か有用なものができないかを考える場合、蜘蛛の巣ととりもちのついた漁網をアナロジーとしてとらえてみると、そこから面白い発想をすることができます。

●蜘蛛の巣の例
具体的には、アナロジーを利用してアナロジーの対象と比較して以下のように、「類似点/異なる点」×「優れる点/劣る点/どちらでもない点」などマトリクスで考えてみることで、イノベーションを誘発するような、さまざまな蜘蛛の巣の特徴を明確に理解することができます。

〇とりもちのついた漁網と「他に」どのような類似点があるか単に今回アナロジーの対象とした事項(網状のものにくっつける)以外に、両者に何か他に類似点はないかを考えてみます。
-優れる点
・漁網と同じように、網の構造を利用して振動を伝える
・漁網と同じように、食べ物(えさ)を捕らえるもの
・漁網と同じように、軽量でありながら強い強度を持たせることができる
・漁網と同じように、網の太さにより強度を自由に調節することができる、など
-劣る点
・海中に置かれた漁網と同じように、劣化する、など
-どちらでもない点
・漁網と同じように、間を風、空気、水が通りすぎていく、など

〇とりもちのついた漁網との異なる点は何か
-優れる点
・蜘蛛の巣は、漁網と異なり、蜘蛛が糸を吐き、手足を使うことで好きな形を容易に作ることができる
・蜘蛛の巣は、漁網と異なり、同じ理由で簡単に補修をすることができる
・蜘蛛の糸は、漁網と異なり、最初からとりもちの機能(粘着性)を持っている
・蜘蛛の糸は細いので、漁網と異なり、振動をより精緻に伝えることができる、など
-劣る点
・漁網と異なり、サイズは小さい
・漁網と異なり、大きな対象物を捕らえることはできない、など
-どちらでもない点
・漁網と異なり、粘着性が継続する、など

以上のアナロジーで明らかになった蜘蛛の巣の特徴により、そのイノベーティブな活用法を考えてみる。たとえば、蜘蛛の巣の糸のようなものを使って、その弱点を補強する技術を加えて、(最初は粘着性があるが、乾くと強固になる糸状のものを使って、)構造物を作るなどがあると思います。

●同じ点、異なる点を広く考える場合に体感が多いに活用できる
それではこのアナロジーの発想法と「体感で思考する」とは、どのような関係があるのでしょうか?その議論は、次回行いたいと思います。

(浪江一公)