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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第304回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(151): KETICモデル-思考(93)
「発想のフレームワーク(36):思考の頻度を高める方法(6) 触覚をもって感じる」

(2023年4月17日)

 

セミナー情報

 

現在、イノベーション実現に向けての「思考の頻度を高める方法」を議論していますが、そのための2つ目の要素、「同じ一つの行動をするにしても思考の頻度を増やす」、さらにはその中の3つの視点の内、最初にあげた分析的に見る(虫の目)の具体的な活動の内の1つ目として、「触覚をもって感じる」について議論したいと思います。

●活用されていない感覚:触覚
分析的な視点を「虫の目」で分析するということを触れましたが、虫は触角を備えており(触覚と嗅覚をつかさどる器官として)、虫においては触覚は極めて重要な感覚でもあります。しかし、触覚は、味覚とともに人間においてはもっとも利用されていない感覚です。日々の活動の中で、この普段活用されていない触覚の活用を意識することで、より多くの情報を収集することができます。

●触覚を活用している例
実際に職業の中で触覚を活用しているものの例に、医者の触診、金型熟練工、美容師、マッサージ士などがあります。金型熟練工については、高い精度が必要されるようなプラスチックレンズの金型の熟練工は、金型の表面をなでるだけで、微妙な凹凸を感じることができるそうです。

ある意味これらの職業に従事する人たちは、実際に触覚から得る情報に基づき価値を創出しているわけです。価値のその先には、イノベーション(新しい価値を創出すること)の可能性があるように思えます。

●人間は触れたいという潜在的な欲望を持つ
時々スーパーに買い物に行ったときなど、お母さんと一緒に買い物に来た子供が、いろいろな商品を触っている場に遭遇したりします。人間は、そもそもものに触れたいという欲求をもっているのではないでしょうか。

また古代の原始人は、日々の生活の中で、現代人よりはるかに多く触覚を利用していました。たとえば狩猟や採集では、何が食べられるか、どの程度熟しているかを理解するため、そして石器や土器を作る上でも触覚を活用していました。

くわえて、そもそも、ものに触れる、たとえば目の前にある机の表面を撫でるだけでも、心地よい感覚を得ることができます。皆さんもやってみてください。

●触覚が活用されない理由
しかし、上であげた仕事をしている人たちを除き、私たちは、日々の活動の中ではまったく触覚を活用していないように思えます。なぜなら、モノに触れるという行為は今回のコロナの感染の脅威をはじめとしての脅威やたとえば手が汚れるなど面倒をもたらすもので、モノに触れることをむしろ避けた生活をしているからです。「あちこち、触るんじゃない」という言葉は、よく親から聞かされた記憶があります。

●触覚を日々の活動の中で活用する
しかし、私たちの日々の活動の中で、触覚の活用を拡大しようとすれば拡大できる機会は数多くあります。掃除、料理、園芸、日曜大工、裁縫など手を使って行う活動を通じ、触覚で感じ、より多くの情報をインプットすることができます。また、触覚は手だけで感じるものではありません。足の裏、そしてからだ全体の皮膚を通しても、ものと触れることで、情報量は増えます。

●触覚の追加的な効果:よりビビッドな感覚として感じ、蓄積することができる
くわえて、触覚で感じた情報は視覚や聴覚で得られた情報より、よりビビッドに感じられるような気がします。そのため、頭の記憶により鮮明にかつ長い期間残ります。

このようにイノベーションに向けて、触覚を通して情報を増やす余地は大きいように思えます。今日一日、いろいろなものに触れてみようと思います。

(浪江一公)