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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第303回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(150): KETICモデル-思考(92)
「発想のフレームワーク(35):思考の頻度を高める方法(5) 五感をもって観察する」

(2023年4月3日)

 

セミナー情報

 

現在、イノベーション実現に向けての「思考の頻度を高める方法」を議論していますが、そのための1つ目の要素、「行動を増やすことで思考を促進する機会を拡大する」を過去4回のメルマガで議論しました。今回からは、2つ目の要素、「同じ一つの行動をするにしても思考の頻度を増やす」を議論したいと思います。

●「同じ一つの行動をするにしても思考の頻度を増やす」ための2つの活動
「同じ一つの行動をするにしても思考の頻度を増やす」には、以下の2つの活動があると、すでに第299回(2023年2月6日)のメルマガで述べました。
〇多面的な視点を持って受ける情報や刺激を観察・感じたりし、またそこから思考する
〇多面的な視点での思考のための学習・訓練を常日頃から行う
今回からはこの一つ目の「多面的な視点を持って受ける情報や刺激を観察・感じたりし、またそこから思考する」を議論していきます。

●「多面的な視点を持って受ける情報や刺激を観察・感じたりし、またそこから思考する」ための3つの視点ここで多面的な視点とはどのようなものなのでしょうか?よく世の中で言われることを含め、以下の3つの視点があると思います。
-分析的に見る(虫の目)
-俯瞰的に見る(鳥の目)
-妄想する(イルカの目)

●分析的に見る
一つ目の「分析的に見る(虫の目)」は、具体的にはどのような活動をしたらよいのでしょうか?私は以下の4つではないかと考えています。
〇五感をもって観察する
〇収集した数多くの情報について、改めてその中で事実を同定する
〇事実の情報の中の注目すべき情報を特定する
〇注目すべき情報のを対象に、なぜを繰り返す

●五感をもって観察する
自分が行動によりある場に身を置く中で、その場で注意深く対象や周囲を観察し、情報をできるだけ数多く収集することが最初の活動です。この際、普通の活動では得られる情報の8割が視覚からと言われていますが、それ以外の聴覚、嗅覚、触覚、味覚をも総動員して情報を収集します。特に触覚や味覚は、手を伸ばす、口に含むという追加的な活動が必要とされるためか、それぞれ全体の1%と言われており、このような機会を意図的に増やすことで、これまで得られなかった情報が得られる可能性が高まります。

この五感で観察することで情報を増やすことにより、単に個別の感覚による活動で得られる情報の増加だけではなく、それらを頭の中で総合化することで、その場の空間の俯瞰的把握や、さらには漠としたその場の雰囲気といったものを、明確に感じ、認識することができるようになります。例えば人間が空間を把握し、感じる場合は、その空間の構造といった視覚情報だけでなく、音の伝わり方(聴覚)や、空気の移動を肌で感じ(触覚)、空気の移動から生まれるにおいの変化(嗅覚)などを総動員していると思います。

人間は動物に比べ、視覚以外の感覚による感受性が低いように思えます(たぶん、そのような研究もあると思います)。しかし、動物的勘という言葉もあるように、視覚以外の感覚を強化することで、情報収集量がおおいに増え、イノベーションの機会が高まるのではないかと思います。

次回から、五感を順に一つ一つ議論をしていきたいと思います。

(浪江一公)