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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第300回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(147): KETICモデル-思考(89)
「発想のフレームワーク(32):思考の頻度を高める方法(2)行動の結果のネガティブな感情も活かす」

(2023年2月20日)

 

セミナー情報

 

前回は「思考の頻度を高める2つの重要要素」をあげました。今回から、まず一つ目の「行動を増やすことで思考を促進する機会を拡大する」を議論していきたいと思います。行動が思考を促進する3つの要因の内の「行動を起こすことで、様々な情報や刺激を受け思考が促される」を取り上げます。

●行動を起こすことで得られるのは、情報や経験だけでなく、そのコンテキストや新たな感覚・感情や充実感
行動するともちろん新しい情報や経験が得られるのですが、それと同等もしくそれ以上の行動の価値は、その行動で直面した事物のコンテキストに関する情報の五感を通しての獲得、さらには、その行動が生み出す新な感覚や感情、さらに加えて、行動を起こすことでそれらを得ることができたという充実感ではないかと思います。

〇コンテキストと関連情報
行動を起こすことで、対象の事物と直接対峙するわけで、それにより、得られた情報の背景にあるそれと関連する様々な情報が、五感を通じで同時に得られます。それら背景にあるそれと関連する様々な情報を構造化することで、隣接可能性に基づく連想が促進され、最終的にイノベーションを起こす可能性が高まります。

〇新な感覚や感情-ネガティブな感情もおおいに活かす
行動の結果得られるのは、コンテキストに関する情報だけではありません。それらから、新な感覚や感情という反応を持つことができます。新な感覚や感情とは、共感、好意、いいな、面白い、きもちいい、嫌悪、憤慨、怒り、失望、疑問、やらねばという気持ち、などです。

もちろん共感や好意などポジティブな感覚や感情は、次の行動をおおいに促進するものですが、ネガティブな嫌悪、憤慨や失望も同様に、もしくはそれ以上に次の行動の大きなきっかけになります。「怒りにかられて」という言葉はあまり良いニュアンスはありませんが、次の行動のドライブフォースとして怒りがあるということは多いものです。ネガティブなドライブフォースがポジティブな行動を生み出すのであれば、そのようなネガティブなドライブフォースは望ましいもので、ネガティブな感情に結び付く行動であっても、おおいに価値があると考えて良いと思います。つまり、ネガティブな感覚や感情も、大きな視点に立つと大歓迎ということです。

ここで一つだけ注意点があります。それは感情の中の「後悔」というネガティブな感情は、次の行動を阻害しますので、「後悔は絶対にしない」という姿勢は、必要です。

〇行動を起こしたことでの充実感
このようにネガティブな感覚や感情を引き起こす行動でも、それを前向きにとらえられるようになると、行動の価値はおおいに高まります。また、行動を阻害するハードル(心理的、時間的、コスト的)を乗り越えて行動することで成果が得られると、行動を起こしたことでの充実感が高まります。また、行動を起こすことのハードルが高い程、行動を起こした充実感は拡大するものです。

●次の行動をしたいという欲求が生まれる
そのため、高いハードルを越えて行動を起こしたことを、自分自身もそしてまわりもほめるという習慣を作り、そしてその結果をネガティブなものであっても肯定的に捉えることで、行動は強化されることになります。そこで、自分の行動やその結果を他の人たちに情報発信することで、他の人が知るところになり賞賛される機会を高め(もちろん批判される、または無視されることもありますが、他人は知らないとほめないという事実があります)、また自分自身がそのようなことを言葉で伝えることで、その行動の価値が反芻され、さらにその行動を強化するということがあるのではないかと思います。

世の中には行動的な人が少なからずいますが、彼らの言動から、彼らがこのような好循環を回していることが推察されます。

(浪江一公)