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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第298回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(145): KETICモデル-思考(87)
「発想のフレームワーク(30):失敗のコストのマネジメント(9) 「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」を実践する」

(2023年1月23日)

 

セミナー情報

 

前回の議論では、「行動を重視する習慣・カルチャーを作る」には、行動の結果のネガティブな刺激をポジティブなものに転化する、もしくは中立化させる方法が必要で、また同じ失敗を繰り返しても良いという議論をしました。今回も前回に引き続き、「行動を重視する習慣・カルチャーを作る」を議論します。

●行動の結果に拘泥すると、モチベーションを下げる
人間は行動を起こす場合、行動を起こすには大きなエネルギーが必要なため、通常良い結果をかなり強く期待して行動していると思います。

しかし、現実の世界では行動を起こしたからといって、いつもポジティブな結果となるわけではありません。ネガティブな結果や意味のない結果となることは、必ず起こります。私のこれまでの経験から得た感覚でいうと、行動を起こすと、良い結果を生むのが40%~60%、悪い結果を生むのが3%、残りが何も結果を生み出さないのではないかと思います。つまり、良い結果が生まれない確率は半分ぐらいあり、かなり高いわけです。

その結果、良い結果を強く期待している分、良い結果が生まれなかったり、悪い結果が生まれたりすると相当がっかりし、次の行動を起こさなくなってしまいます。そのため、あまりに行動の結果に拘泥すると、モチベーションを下げることになります。

●行動の結果は問わず、行動そのものを賞賛する
それではどうしたら良いか?

それは、結果を生まないもしくは悪い結果が生まれる状況を積極的に受け入れ、行動にはその結果を問わず、行動そのものを行ったこと自体を賞賛し、ひたすら行動することです。一見無ぼうに思われるかもしれませんが、そこには、2つの大きな理由があります。

●理由その1:良い結果は行動した数に比例する
私が座右の銘としている言葉に、「The reason why so little is done is because so little is attempted」(Samuel Smiles)があります。何かを成し遂げるには、行動の内容もさることながら、行動をすること自体が極めて重要であるということです。良い結果は行動した数に比例するのです。

つまり、非効率に思われるかもしれませんが、結果を生み出すには、「下手な鉄砲、数打ちゃ当たる」姿勢が大事なのです。

●理由その2:経験から学べる
「下手な鉄砲、数打ちゃ当たる」を実践する内に、実は、いろいろ経験が蓄積され、だんだん行動の質が向上していくということが現実には起こります。まさに経験曲線の理論があるからです。行動すればするほど、経験が蓄積されるのです。

●PDCAは回さなくて良い
経営の世界では、PDCAをきちんと回さなければならないということが良く言われます。もちろんこれは大事なことで真実なのですが、常にPDCAを回さなくてはならないと杓子定規に考えること自体が、行動の制約です。なので、私はもっと自由に、とにかくシンプルに内容はともあれ、行動を起こすことを賞賛するという価値感を持ち、行動することが極めて重要と思います。人間は放っておいても、失敗に学ぶものです。

(浪江一公)