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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第296回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(143): KETICモデル-思考(85)
「発想のフレームワーク(28):失敗のコストのマネジメント(7) なぜ年初の抱負は実現できないか」

(2022年12月26日)

 

セミナー情報

 

現在このメルマガの中で、イノベーションを生み出し、さまざまなことにトライする気持ちになるには、イノベーション達成のためには時間を掛けても良いと思えるようにするという議論をしています。時間を掛けても良いと思えるようにするには、イノベーション達成に向けて十分な時間を確保する必要があり、そのためには長期で目標を立てることが有効であるという話をしています。前回同様今回は、この、時間を掛けても良いと思えるようにするための長期での目標設定について、議論を続けたいと思います。

●なぜ年初の抱負は実現できないか
2023年のスタートが近づいていますが、年初にはその年の抱負を考える方も少なからずいると思います。しかし、その抱負は残念ながら毎年実現されないということが多いのではないでしょうか?それはなぜか?それは私は一年という時間軸が短すぎるからと考えています。一見、一年は長そうですが、現実にはそれほどは長くはありません。この点は、年末が押し迫る今、皆さん実感をされているのではないでしょうか。

前回は、イノベーションを駆り立てる長期の目標の要件を、ワクワク感を生み出すことであると述べました。またワクワク感を生むための3つの要件(〇目標を達成することは、自分、組織そして社会にとって真に大きな価値を生む、〇他人があまり設定しないようなユニークな目標、〇達成できる強い予感がある)に触れました。逆に言うと、ワクワクするような目標を達成するには、長期の時間軸が必要であるということです。

年初の抱負は長くても達成までに1年ですので、なかなかワクワク感を感じるような目標となりません。また、仮に上の3つの要件を満たす目標を「設定」できたとしても、達成は簡単ではありませんので、1年では短すぎます。また、年の半ばで年末までの達成ができないとわかると、急にその目標は色あせ、そこに向かって行動を駆り立てるということをしなくなります。

●一年の目標ではなく、長期、例えば、5年、10年の目標を設定する
しかし、長期の目標ではそのようなことは起きません。ワクワクする目標が実現しやすくなりますし、仮にそれまでの半年後の進捗について振り返って、当初の計画より進んでいなくても、まだ達成までの時間は十分ありますので、むしろもっと頑張ろうという気持ちになるものです。

●長期の目標を1年ごとにブレークダウンするということはしない

プロジェクトマネジメント的には、その長期目標達成に向けて、短期の目標とそのための計画にブレークダウンするということをする訳ですが、しかしイノベーション創出を目的とした長期の目標は、むしろそのようなブレークダウンはしない方が良いと思います。なぜか?そこには、2つの理由があります。

①短期の目標が達成できないと、長期目標達成のモチベーションがしぼむブレークダウンした短期の目標が達成できないとなると、もしくは達成できないことがわかると、急に達成意欲が減退するからです。その時点で、長期目標達成が頓挫してしまう可能性が高まります。

②いろいろな試行錯誤をする必要性の存在長期目標達成に向けて、いろいろな試行錯誤をすることが必要です。設定した長期の目標は、達成は簡単ではありませんので、様々なことをトライし、目標達成の道筋を探る必要があります。短期目標とそのための活動計画を立ててしまうことは、そのような試行錯誤の機会を奪ってしまうことになります。

是非皆さんも来年は、来年の達成目標ではなく、長期の目標を設定してみてください。

(浪江一公)