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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第294回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(141): KETICモデル-思考(83)
「発想のフレームワーク(26):失敗のコストのマネジメント(5) 第一歩を踏み出したことをほめる」

(2022年11月28日)

 

セミナー情報

 

現在「めんどくささ」を払拭する方法を議論しています。今回もその議論を続けていきたいと思います。

●第一歩を踏み出したことをほめる
前回のメルマガでは「めんどくささ」を払拭する方法として、「仕事を細かく分割」して、まず第一歩を踏み出す。そうすれば、後から継続して起こる「隣接可能の効果を信じ」て思考・活動すれば良いという議論をしました。つまり、第一歩を踏み出せば、後は極論すると「自然に」当初予想していないような展開が期待できるということです。

しかし、そうであっても、それでもこの第一歩を踏み出すのが気持ち的に難しい。どうしたら良いのか?それは、結果はどうあれ、第一歩を踏み出すという行為そのものを、個人レベルでは自分自身でほめるという習慣を作る、また企業サイドでは、研究者が第一歩を主体的に踏み出したことをほめるという仕組みを作ることが必要ではないかと思います。

後者に関しては、企業においてはやりっぱなしで散らかすだけの人は、評価はされないという価値基準が、特に日本企業においては極めて強いように思えます。もちろん難題に対し、あきらめず根気よく取り組むことは大変重要です。しかし、そのような価値基準が第一歩を踏み出すことを躊躇させ、結果的に面白いアイデアを殺してしまうことにもなることも忘れてはなりません。

●時間を掛けても良いと考える
そもそもイノベーションは簡単に生み出せるものではありませんので、短期でいついつまでにこのイノベーションを起こすという目標設定は、その点あまり適正とは言えません。時間を掛けても良いと思えば、様々なことにトライをできますのですし、隣接可能性の効果を利用して、アイデアが発酵し発展することを待つこともできます。ですので、鷹揚に構えて、まずはやってみようと思えるような環境を作れば、最初の一歩を踏み出すハードルも随分下がると思います。

しかし、この点については、切羽詰まらないと良いアイデアがでない、という人がいるのも事実です。エネルギーを集中するには、自分自身を切羽詰まった状況に置くということが必要である。また、特に忙しい人達にとって直前にエネルギーを集中し、良いアイデアが出たという経験は、まさに達成感、さらには快感を感じるもので、そのようなことができる人にとっては習慣になりがちということもあると思います。

一方で、このアプローチの問題点は、このアプローチではアイデアは自分自身の既存の知識のみを基にせざるを得ず、さまざまな他の可能性を試すということができません。この問題点の存在は、あきらかです。したがって、切羽詰まらないと良いアイデアがでないという人も、思考法を十分な時間を確保し、「時間を掛けて」イノベーションを起こす方向に転換することは、多いに効果のあることと思います。

それでは、時間を掛けても良いと考えるようにするためにはどうするか?それは長期で目標を立てるということです。長期で目標を立てることにより、その達成までに十分な時間を確保することができます。また、十分な時間を確保することができるために、短期や中期では達成できないような高い目標を設定でき、それがまたそれがイノベーションを誘発するという、副次的な大きな効果も期待できます。

次回もこの議論を続けていきます。

(浪江一公)