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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第268回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(115): KETICモデル-思考(57)
「本質とは何か(7)」

(2021年11月15日)

 

セミナー情報

 

現在、知識や経験を整理するフレームワークについて複数創出する目的で、その中の一つの整理の視点として本質とそれ以外という区別があるという理解から、「本質とは何か」を議論しています。また、企業活動の「本質は何か」を考える上で、本質は「自社の存在価値」と密接に関係する事項であると考え、それを「外側から見た自社の存在価値」と「内側から見た自社の存在価値」に分けました。今回は後者の「内側から見た自社の存在価値」の要件の3つ目、「自社の存在価値の目標には永続性がある」について議論したいと思います。

●自社の存在価値の目標には永続性がある

自社の存在価値の目標に永続性を持たせるには、4つの点を満たす必要があると考えます。以下に一つ一つ議論をしていきます。

〇いつまでたっても完璧な達成はできない目標であること

将来のいつかの時点で、その目標が達成できてしまうようなものでは、その後の永続性を実現することはできません。したがって、目標は到達点ではなく、常に満たすことのできない、まだまだ努力や活動の余地のある方向性を示す目標である必要があります。しかし一方で、日々その目標に向かっているという小さな達成感の実感がないと、努力や活動の継続性(すなわち永続性)が生まれません。

この点に関しては、以前に提示したシマノは自社の存在価値を「安全に快適に走れる自転車部品を生み出すこと」としており、「安全に快適に走れる」という目標は、常に努力と活動の余地があります。またこの目標は、一方で毎回の商品企画では「前のモデルよりこれだけ安全度を増した」といった、達成感も生み出すものです。

〇いずれのステークホルダーに対しても無害であること

自社の存在価値は、あるステークホルダーにとっては有益であるが、その他のあるステークホルダーには有害であるという状況では、自社の存在価値に永続性を持たせることはできません。すべてのステークホルダーにとって有益である必要はありませんが、少なくとも考えられうるすべてのステークホルダーに対して無害である必要があります。

〇いつの時代にも通用するもの

現在の経済状況や社会情勢は将来に向かって、必ず変化をします。しかし、将来を明確に読むことは不可能という事実もあります。そこで「自社の存在価値」はいつの時代にも通用する、すなわち価値があり正しいものでなければなりません。たとえば、上であげたシマノの自社の存在価値目標の「安全に快適に走れる」の例は、1000年たっても有効であり続けるものと思います。

〇(自社の活動対象領域では)場所に関わらず通用するもの

「いつの時代に」があれば、「どこにおいても」があってしかるべきできです。したがって、自社の存在価値目標は、場所にかかわらず通用するものである必要があります。

ただ一点、世界を広く見渡せば、実は我々とはずいぶんかけ離れた価値観を持っている人たちや地域も存在することも事実です。例えば、急進的なイスラム教徒が住む地域や中国や北朝鮮といった専制国家も、現実に存在します。そのため、「自社の活動対象領域では」という条件付けは必要でしょう。またそうであれば、自社の存在価値目標の設定のためにも、自社の活動対象領域を選ぶということも重要になります。

(浪江一公)