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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第248回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(95): KETICモデル-思考(37)
「知識・経験を関係性で整理する(25)-重複」

(2021年2月1日)

 

セミナー情報

 

現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を議論しています(全体像は昨年の2020年1月27日第224回のメルマガをご参照ください)。今回は、「重複(一部を共有)」について考えてみたいと思います。

●MECE(だぶりなく、もれなく)に適合しないものの存在としての重複

重複は2つもしくはそれ以上のグループで、一部を共有している状況です。これまでこのメルマガの中では、MECE(「だぶりなく」、もれなく)の思考の重要性に何度も触れてきました。「だぶりなく」は、重複がないことです。

しかし、現実には「だぶりない」状況を考えてもどうしても重複部分が出てくるということは、世の中には多いものです。この重複部分に注目することが、今回のメルマガのポイントです。この重複部分は、以下のような視点からインサイトを提供してくれるので、イノベーションに向けての大変重要な関係性の視点と考えられます。

●その1:従来の常識へのアンチテーゼを提供

人間を含めて動物、植物の中には両性具有という状況が見られます。男性と女性の性格の両方を持つ状況を言います。従来の常識では、男(おす)と女(めす)にしか分けて考えなかったものが、現実には両性を重複してもっているという状況が存在するということです。これは従来の常識へのアンチテーゼであり、新しい視点をもたらしてくれます。

●その2:要(かなめ)の存在

様々なグループに重複して所属・存在しているということは、様々なグループにおいて重要な位置、すなわち要(かなめ)を占めている可能性があるということです。世の中で一般的には、一つの要素が様々な性格をもっているということはあまりないように思えます。なんらかの一つもしくは数少ないことに偏りをもっているのが、自然です。したがって、ある一つの要素が複数のグループに属しているということは、その要素が持つ何等かが極めて重要な要素である可能性があります。

例えば、ある人が様々な数多くのグループに属しているとします。可能性としては、その人が様々なグループから勧誘されそのようになっている。もしくは、その人が主体的に様々なグループに属しているなどが考えられます。そこから、その人には一般的以上の能力や特質をもっている可能性が高まります。

●その3:範囲の経済性

上で議論したその2の一部としてかもしれませんが、複数のグループに存在していることは、その要素が範囲の経済性を有している可能性があります。範囲の経済性とは、一つの能力、資産、特性が「様々」なことに貢献するという概念です。例えば、ある顧客との関係性を構築・維持するにはコストがかかります。したがって、そのコストをかけて獲得したその顧客との関係性を利用して、その顧客に「様々」な製品を売ることで、製品当たりの顧客構築・維持コストを低減することができます。ここではその顧客との関係性が範囲の経済性を実現している要素ということになります。

●その4:無駄の存在を示唆

仕事などでは、重複は無駄の象徴と考えられています。無駄の存在、すなわちより効率的な活動に改善するための目の付け所としても、意味のある概念と言えます。

(浪江一公)