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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第243回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(90): KETICモデル-思考(32)
「知識・経験を関係性で整理する(20)‐外発的動機付けによる内発的動機付けの誘引(12)」

(2020年11月9日)

 

セミナー情報

 

今回も引き続き、エドワード・デシが内発的動機付けに必要と主張している2つの要素である「自律性」と「有能感」の内、後者の実現手段として、「(その2) 有能感獲得に向けて積極的に活動する」を議論します。前回と同様、皆さんが「新事業創出チームメンバーの社内公募に手をあげるかどうか」の判断をする場面を想定して、今回は全体プロセスの最後5つ目「5. GainとPainとを天秤にかけ最終的に取り組むかどうかの意思決定する」を議論して行きたいと思います。

●5. GainとPainとを天秤にかけ最終的に取り組むかどうかの意思決定する

ここまで以下のプロセス上のステップを一つ一つ議論をしてきました。今回はそれらに基づき、最終的な結論を出すステップです。

1. GainとPainを網羅的にリスト化する
2. Gainの姿を明確に描き、得られるGainの大きさと得られる可能性を想定する
3. Painを幅広に想定し、そのインパクトと起こる可能性を評価する
4. Painのインパクトや起こる可能性を低減する方法を考える

このようなステップを踏み最終的な結論を出すことによって、狭い視野(特にPainの過大視)に基づく思い込みや人間が持つ共通的なバイアスを排し、より前向きな結論に至る可能性が高まります。そして、本ケースの場合、実際に「新事業創出チームメンバーの社内公募に手をあげる」という結論に至れば、新事業創出プロジェクトメンバーとして新事業創出を実際に経験することになり、それにより有能感を獲得する可能性が高まります。

今このような議論を進めている中で、私自身も過去にこのような思考を持つことができれば、より大きな有能感を獲得できていたのではないかというある意味後悔を感じています。

●現実にはこのようなプロセスをたどることは困難

残念ながら、通常は我々はこのような面倒なステップを踏んで意思決定をしません。なぜなら日々大小様々な問題が持ち上がり、このようなステップを踏んで検討する心理的な余裕がないからです。そのため我々は通常、ほとんどの場合少ない思考と大きな直観によって判断をします。

その結果、間違いを犯すことになります。小さな間違いは、甘受できるという意味で大きな問題はないかもしれません。また失敗から学ぶということがあるので、誤った判断は必ずしも長い目で見れば大きな問題ではないかもしれません。しかし、失敗は誰しも避けたいものです。

●日々の生活の中で本プロセスをできるだけたどることで直観力を鍛える

それでは、十分な検討をする心理的な余裕のない日々の生活において、様々な課題・問題にどう対処したら良いのでしょうか。

私は日々の生活の中でも、このようなプロセスをたどる思考を「できるだけ」するようにするように習慣付けることで、このようなプロセスを自分自身の直観に組み込む、すなわち極めて短時間でこのプロセスをたどることができるようにすることが、可能となると思います。千本ノックで、野球のフォームを身に着けるようなものです。

(浪江一公)