『価値づくり』の研究開発マネジメント 第237回
普通の組織をイノベーティブにする処方箋（84）： KETICモデル-思考（26）
「知識・経験を関係性で整理する（14）‐外発的動機付けによる内発的動機付けの誘引（6）」
（2020年8月17日）
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前回エドワード・デシの4段階理論における第3段階を実現する活動として、前回は2つ目の「（その2） 有能感獲得に向けて積極的に活動する」について議論しました。今回も引き続き、同テーマを考えてみたいと思います。
（その2） 有能感獲得に向けて積極的に活動する
●自ら主体的にチャレンジングな環境に身を置き、自分自身に問題への対峙と解決を強制する
前回議論した他人からのフィードバックの機会を持つこと以外にも、自己の有能感を高める方法があります。それは、自ら主体的にチャレンジングな環境、すなわち達成すれば成果は大きいが、問題の多い環境に身を置き、それを解決しなければならない状況に自身を追いやり、それら問題の解決し成果を手に入れることで有能感を獲得するということがあると思います。
●人間は未知の環境を嫌う
しかし、新しい未知の環境に身を置くことには、当然大きな心理的な抵抗があります。そもそも、人間は自分の経験していない新たな環境に最初は心理的に拒否をするようにできています。得られるGainと負担しなければならないPainのバランスが見えない状況では、そのような環境自体を回避するのが最適な解だからです。原始の時代、人間は日々自分達の生命を脅かす数多くの問題に直面しました。そのような環境にいつも正面から対峙していては、早晩命を落としてしまうことは間違いないでしょう。生き続けるためには、新しい環境を回避するのが、最適な判断です。そのため現代人の脳の中にも存在する原始の脳が、未知の環境に直面したら、回避するように指示するのではないかと思います。
●新な環境に身を置くと有能感を獲得できる可能性が高い
しかし、現代社会においては、原始の時代で頻繁に起こっていた命を奪うような重大な問題に直面することは極めて稀です。また問題を解決する手段は、原始の時代よりも格段に多くなっています。加えて、より重要なことに、ここ数千年の間に人間は高度な知識を蓄積し、またより論理的に考え、対処する能力を追加してきました。
つまり、新しい環境を拒否するという初期の心理的抵抗は人間として当然存在するものの、現実にそれら環境が提示する問題の解決法を突き詰めて考えれば、それら問題を解決できる方法が見つかるということです。また、現代社会では、その問題を解決できなくても、命は取られないということです。そのような事実を前向けに受け入れ、積極的に新たな環境に身を置き、問題を解決することで、有能感という大きな果実を得られる可能性が高まります。
●積極的に新たな環境に身を置くための思考法
しかし、それが積極的に身をおくべき環境かどうかを見極める必要があります。そのためには、それを見極める思考法を身につけなければなりません。そのための思考法として以下があります。
〇GainとPainを網羅的にリスト化する
〇Gainの姿を明確に描き、得られるGainの大きさと得られる可能性を想定する
〇Painを幅広に想定し、そのインパクトと起こる可能性を評価する
〇Painのインパクトや起こる可能性を低減する方法を考える
〇GainとPainとを天秤にかけ最終的に取り組むかどうかの意思決定する
次回もこの議論を続けたいと思います。
（浪江一公）