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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第231回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(78): KETICモデル-思考(20)
「知識・経験を関係性で整理する(8)-人間の動機付け」

(2020年5月12日)

 

セミナー情報

 

今回は、「多様な思考パターンを実現」するための方策としての「課題を持つ環境に自らを置く」ための1つ、「Gain:自分の望むものを得る環境に身を置く」の方法として、外発的動機付けと内発的動機付けについて議論したいと思います。

●外発的動機付けと内発的動機付け

動機付けに関し、心理学での研究において外的なものすなわち外発的動機付けと内的なもの、すなわち内発的動機付けの2つがあることが指摘をされています。

外発的動機付けは「学習するためには、これは人間も他の動物もですが、何か物質的な賞罰とか、賞賛・叱責が不可欠と考えます」(「学ぶ意欲の心理学」市川伸一著)と説明されています。一方で、内発的動機付けとは「外から報酬のための手段としてではなく、ある活動をすること自体を自己目的的に求める欲求」(同書)と定義されています。

●「自分自身の高い目標を持つ」は、どちらの動機付けなのか?

前回は、「Gain:自分の望むものを得る環境に身を置く」の1つ目として、「自分自身の高い目標を持つ」を議論しましたが、これはどちらの動機付けに該当するのでしょうか? 自ら主体的に目標を設定するので、一見内発的な動機付けに思われるかもしれませんが、高い目標を達成する目的は、その活動自体を自己目的的に求める活動ではなく、いずれにしても金銭的な報酬や他人からの賞賛、自尊、他人とのつながりといった非金銭的な報酬を目的としているので、外発的動機付けを求めて行うための活動と考えられます。

外発的動機付けと内発的な動機付けの区分は、主体的な活動かどうかではなく、その活動自体を求めるかどうかで判断されるべきものです。

●内発的動機付け:好奇心

それでは、内発的動機付けとは具体的にはどのような活動なのでしょうか?

先日NHKのBSの番組を見ていて、自閉症の子供が鉄道に興味を持ち、鉄道の詳細な絵を描くようになり、大人になってもその絵を描き続けたという(その人はその後亡くなってしまうのですが)番組をやっていました。この人が子供のころ鉄道に関心を持ったのは、鉄道そのものであり、それは内発的な好奇心です。何かGain(非金銭的なものを含め報酬)を求めて鉄道に関心を持ったわけではありません。まさに内発的動機付けは、好奇心ということになります。

人間は、目的はないが、関心があるというもの、すなわち好奇心が沸く対象というものをもっているものです。

●どうしたら好奇心を持つようなるのか?

外発的動機付けを与えることは、簡単ではありませんが、その方法は明確です。そもそも会社は給与、地位、評価、賞賛などの外発的動機付けで運用されているので、それを明確にし、拡大し、矛盾がないように運用すればよいのです。一方で内的動機付けである好奇心は、どうやったら社員が持てるようになるのでしょうか?

好奇心を創出するメカニズムについては、ここではなく、KETICモデルの最後のC:Curiocityで別途議論をしたいと思いますが、心理学の研究でも認識されている方法に、外発的動機付けから内発的動機付けを誘引する方法があります。この議論は次回行いたいと思います。

(浪江一公)