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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第226回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(73): KETICモデル-思考(15)
「知識・経験を関係性で整理する(3)」

(2020年2月25日)

 

セミナー情報

 

前々回から時系列や物理量で整理した知識を、更にそれらの関係性を考え整理・拡大することについて議論をしています。今回もその議論を続けます。今回は「原因と結果」の2つ目の類型の「ピラミッド(1つの原因→複数の結果)」について、議論します。

●1つの分かっている「結果」から芋蔓式に、他の「結果」を考えることができる

これまで「風が吹けば桶屋が儲かる」を例に議論をしていますが、「風が吹く」という原因は「土埃を舞い上げる」という1つの結論だけでなく、「他の物を舞い上げ」たり、その他にも「物を変形」させたり、「摩擦熱を生み出す」など、多くの場合複数の結果を生み出すことができます。

ここで重要なことが、1つの「結果」でも分かると、そこから芋蔓式に他の「結果」を想定することができるということです。「土埃を舞い上げる」ことができるのなら、「他の物も舞い上げる」ことができるだろう。風は「物を舞い上げる」だけなのか?」といった思考・連想をすることができるからです。

●原因の本質を定義する:「風が吹く」とはどういうことなのか?

実はこの点は前回の「重要点」と同じ議論なのですが、「風が吹く」の本質は何かを考えて定義することにより、他の結果を想定することができます。

「風が吹く」とは、その本質(の1つ)を言語化すると、「空気という質量を持ったものが移動する」ということです。そうであれば、土埃以外の物も舞い上げることもできるし、舞い上げることができなくても質量を持つ空気の移動により物を移動させることができるであろうし、対象物の形状により対象物の周辺に圧力差を発生させ対象物を浮き上がらせることもできるし(これは飛行機が飛ぶ原理です)、対象物を摩擦熱で温度を上昇させることもできるという結論を連想することができます。

●連想を生み出す源の知識・経験を多く持つ

他の結果を連想するためには、上の「原因の本質を定義する」以外にも、もう1つ重要なことがあります。それは連想の源となる知識や経験を多く持つことです。まさに、ここ「知識・経験を関係性で整理する」では、収集した知識や経験をどう整理するかを議論していますので、そこの部分の議論です。

知識や経験が多くあればある程、連想の可能性が高まります。上の例で言えば、また、風により例えば木の葉が舞い上がる状況を見ていれば、「風は土埃だけを舞い上げる訳ではない」ということが分かりますし、風が強い日は洗濯物が乾きやすいという経験をしていれば、「風は水分を吹飛ばしてくれる(現実には乾燥した空気が水分を吸収する)」ことが分かりますし、大きな重量を持つ航空機が空中に浮遊する理論に関する知識を持っていれば、上のように「風が吹く」との関係性に気が付く訳です。

●形式知だけでなく暗黙知も多いに役に立つ

ここで連想を生み出すのは形式知(知識)だけでなく、また形式知に転化されていない暗黙知(経験)も多いに対象となります。したがって、常日頃から関連するような事象を五感で感じておくことは大変重要です。

(浪江一公)