Top
> メルマガ:『価値づくり』の研究開発マネジメント

 

『価値づくり』の研究開発マネジメント 第203回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(50): KETICモデル-知識:自社の強み(7)
「強みを未来志向で設定する第4要件:いずれの企業にも達成がむずかしい」

(2019年3月25日)

 

セミナー情報

 

第199回から「強みを未来志向で設定する」要件を議論していますが、今回は第4要件の「いずれの企業にも達成がむずかしい」を議論します。

「強みを未来志向で設定する第4要件:いずれの企業にも達成がむずかしい」は、以下の2つの軸(その1とその2)で議論できると考えています。

●その1:「強みの成熟度」において『若い』
市場や技術の新しさ・古さを表す概念に「成熟度」があります。成熟度とは、その市場や技術が生まれてどのくらい経つかを示すものです。成熟度は通常、揺籃期、成長期、成熟期、老衰期の4つの期で議論をします。揺籃期は、その活動に関わる企業や人はごく一部に限られ、また本当に将来成長するのかには不確かな部分は大きい時期を言います。その後、その市場や技術が確かなものとなることが見極められると、関与者が拡大していきます。それが成長期です。そして、その関与者の拡大が止まる時期を成熟期と言います。そして最後の老衰期では、関与者は減少していきます。

強みも、この「成熟度」で議論することができます。揺籃期の段階では、世の中一般には、それは強みとは認識されておらず、また揺籃期の最初の段階では、その強みそのものの概念すら存在しない時期です。この揺籃期の時期には、強みは世の中には広く知られていませんので、「偶然」そのような強みを持ち合わせていた企業を除き、ほとんどの企業はそのような強みを持っていないことになります。

したがって、強みの第4要件の「いずれの企業にも達成が難しい」を示す指標として、強みの成熟度において、その強みが成熟していない、すなわち『若い』という視点があります。

そのために、強みの候補を見つけるには、世の中で強みと認識されていない段階で、それを強みと見極めることです。つまり強みの第2要件の「創出顧客価値が大きい」と第3要件の「顧客価値創出領域が広い」の前提となる、対象となる新たな顧客価値自体を見つけ、それを見極める能力が極めて重要であるということです。

●その2:「達成困難性」
次の軸が達成困難性です。いくら他社が認識していない「創出価値が大きく(第2要件)」、「顧客価値創出領域が広い(第3要件)」強み(候補)であっても、他社が簡単に実現できるのでは、「いずれの企業にも達成がむずかしい(第4要件)」とはなりません。この概念は、バーニーの「模倣困難性」とほぼ同義ですが、違いは、「模倣困難性」は、自社がすでにその強みを持っていることを前提にしていいますが、ここで言う「達成困難性」は自社もまだその強みを持っていないことを前提としています(「強みを未来志向で設定する」とは、自社が今弱くても、それを将来名実共に強みとすることに向けて、強化をする対象を設定することを言います)。

それでは、この達成困難性はどうやって知ることができるのでしょうか?

私は2つの視点があると思います。まず1つ目ですが、そもそもその強みを身に着ける基本原理が分かっていなこと。例えば東京-大阪間の500キロを時速500キロの車両を作って1時間で結ぼうとしたとき、どのような動力を利用すれば、時速500キロを達成できるかが、わかっていないことです。

2つ目の視点は、その基本原理をどう実現するかが分かっていないことです。時速500キロの車両は、車体を浮上させれば実現できるという基本原理が分かっていても、それをどう東京-大阪間500キロの長距離で実現するか実現する技術(強み)が分かっていない状況です。

(浪江一公)