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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第194回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋(41):KETICモデル-知識:市場の知識(8)

(2018年11月12日)

 

セミナー情報

 

現在、本メルマガ記事ではマクロ環境分析の議論をしていますが、今回は、PESTEL(Political:政治、Economical:経済、Societal:社会、Technological:技術、Environmental:環境、Legal:法律)のうち、4つ目の技術についての議論をしたいと思います。

●技術のマクロ環境分析で必要な2つの視点:WhatとHow

マクロ環境における技術分析においては、明確に分けなければならない2つの視点があります。それは、What、すなわち市場サイドの技術変化により市場ニーズの変化をもたらすとHow、すなわち自社サイドの技術変化による既に存在する市場ニーズの充足法の変化です。

○What:市場サイドの技術変化による市場ニーズ変化

市場サイド、すなわち顧客の技術の変化は、自社の製品やサービスのニーズの変化をもたらします。例えば自社が、自動車部品メーカーであるとすると、市場での自動運転・無人運転技術の進展は、既存の市場ニーズの変化や新しい市場ニーズ創出をもたらします。

自動運転・無人運転技術の進展は、100年に一度の変化などと言われるように、社会の大きな構造の変化を生出します。物理的な距離によるそれまで存在した心理的な距離が、自動運転・無人運転により(相変わらず物理的距離は存在するものの)心理的距離を一挙に解消するということが起こります。

そうすると、例えば観光のニーズが拡大するといった従来からあった市場ニーズの変化や、これまで存在しなかった車内での仕事や遊びなど様々な活動という新しいニーズが生まれます。

ここでは、市場サイドの技術が今後長期的にどう変化し、それが自社の対象とする市場ニーズにどう影響するかを考えなければなりません。

○How:自社サイドの技術変化による市場ニーズ充足法の変化

もう一つは、市場サイドの技術変化ではなく、自社が製品やサービスを実現する上で利用する自社サイドでの技術の変化です。自社が自動車メーカーであれば、自動運転や無人運転の技術の出現や進展は、まさに自社が何等かの方法でその技術を自社のものとして、自社の製品やサービスの中に組み込まなければなりません。

その際は、自社が対象とするコア技術やその周辺の技術を長期の視点で分析し、製品や事業に反映するという、活動が必要となります。

●What:市場ニーズ変化とHow:市場ニーズ充足法の変化の連鎖

もちろん上の2つの視点は、常に独立して起こるものではありません。両者が因果関係を持って、変化が発生することも多いものです。

○What:市場ニーズ変化→How:市場ニーズ充足法の変化

上で挙げた自動車部品業界の例で言うと、自動車メーカーのEV技術の進展を受けて、内燃機関用部品を生産してきた自動車部品メーカーは、自社の技術の陳腐化に直面し、何らの技術的な対応をしなければ生き残ることはできません。

○How:市場ニーズ充足法の変化→What:市場ニーズ変化

自動車部品メーカーが従来の製品やサービスの充足法を劇的に改善することで、市場サイドのニーズを量的(製品のコストを大幅に下げる等により)、さらには質的にも変化させることもできます(その技術により新たな実現機能を付加する等により市場が全く新しい製品やサービスを創出する等により)。

(浪江一公)