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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第186回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋(33):KETICモデル-知識:外部技術(5)

(2018年7月17日)

 

セミナー情報

 

前回までは自社のコア技術を拠り所にして外部技術を活用する方法として(第182回参照)、「その1:自社のコア技術の補完技術」について議論してきました。今回は、その外部技術を活用する方法の2つ目として、「その2:自社コア技術の強化のための技術」について、議論をしたいと思います。

●「自社のコア技術の強化のための技術」とは一体なんのこと?
「自社コア技術の強化のための技術」と聞いて、「自社の技術の強化」のための技術とは何のことを言っているのかと思う方もいるかもしれません。ここでは自社のコア技術は複数の要素技術群から構成されているため、その要素技術群を更に増やすための新たな要素技術を外部に求めるということです。

●「その2:自社のコア技術の強化のための技術」はコア技術の『内側』の技術を求めるもの
前回まで議論してきた「その1:自社のコア技術の補完技術」は、コア技術の『外側』の技術、すなわちコア技術ではない技術を求めるものです。一方、今回議論している「その2:自社のコア技術の強化のための技術」は、コア技術の『内側』の技術、すなわちコア技術を構成する要素技術を求めるもので、両者にはその点の違いがあります。

●コア技術強化のための外部に求める技術をどう「認識」するか?
自社のコア技術強化のためには、どのような新たな要素技術で強化することができるのか?強化しなければならないか?という新たな対象要素技術の「認識」が重要となります。

この点については、その「認識」を自社自らが行うのか、外部から提案してもらうのかに大きく分かれます。

○自社自らが認識する。
自社自らが認識するにしても、「市場のニーズからの発想」と「コア技術のシーズ要素技術」から発想する場合の2つが考えられます。

-市場のニーズからの発想
これは新たな顧客価値創出機会の探索活動の中から、ある魅力的な市場ニーズが発見されたが現状の自社のコア技術の要素技術群では対応できない場合に、新たな要素技術として追加が必要な技術として認識するものです。

対象となる新たな顧客価値創出機会の探索活動にも、日々の対象市場の顧客との草の根のコンタクトの中から市場ニーズを見つける方法と、長期にわたる対象市場のマクロ環境の分析を俯瞰的に行うことで、新たに生まれると想定される市場ニーズを認識するという方法があります。

-コア技術のシーズ要素技術から
もう一つが、自社のコア技術の要素技術群にはないが、こんな要素技術があれば、様々な製品や事業に展開できるのではないかから考えるものです。このような気づきを得るためには、自社の中ではまずはコア技術が明確に定義され、組織の中で共有され、自社の技術者・研究者にコア技術をベースに考えるという姿勢や活動が必要です。そためにも、全社での組織横断的なコア技術強化活動が求められます。そのような活動に、3Mのテックフォーラム、日東電工のSTEPなどがあります。

○外部から提案してもらう
外部から新たにコア技術に追加すると良いと思われる要素技術を提案してもらうには、自社のコア技術を外部に公開し、コア技術を強化する新たな要素技術の提案を募ることです。外部にコア技術を公開する方法は、前回に議論した活動や設備になりますが、それに加えて、自社がコア技術を強化する外部技術を募っているというメッセージをウェブサイト上に掲載し、そして外部からの提案を受ける窓口体制を作る必要があります。

(浪江一公)