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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第183回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋(30):KETICモデル-知識:外部技術(2)

(2018年6月4日)

 

セミナー情報

 

現在このメルマガでは、KETICモデルの最初の知識(Knowledge)の中の技術の知識の議論をしていますが、今回は、前回で議論した外部技術の活用法の内、「その1:自社のコア技術の補完技術」をどう探すかについて議論をしたいと思います。

「自社のコア技術の補完技術」を探す方法として、まず一つ目に、外部に自社のコア技術情報を発信し、外部からの自社へのアプローチを促進し、その後当該対象者との間の議論を深化させるプロセスの構築があります。

●方法1:コア技術情報の発信、外部からのアプローチ、更なる議論の深化のプロセスの構築

○外部の人達の技術知識を活用する

前回のメルマガでは、自社のコア技術とスパークを起こす外部の技術の「収集・蓄積」という言葉を使っているのですが、実は自社で収集・蓄積をしなくても、外部にある知識をそのまま活用してスパークを起こす状況を作ってしまおうというのが、ここでのポイントです。

オープンイノベーションの提唱者である、ヘンリー・チェスブローは、その著書の中で、

「P&Gは8,600人の研究者を雇用しイノベーションに努めている。しかし、社外には150万人の研究者がいる。社内ですべてのイノベーションを行うのは合理的だろうか。」(「OPEN INNOVATION ハーバード流イノベーション戦略のすべて」、ヘンリー・チェスブロー著(大前恵一朗訳)、P.11」-一部文言変更)

と言っていますが、外部に存在する研究者に自社のコア技術を活用することを考え提案してもらおうということです。そのための方法が、自社のコア技術を外部に効果的に発信し、外部の人達の頭を刺激し、外部から自社にアプローチしてもらい、更にお互いに議論を深め知識を深化させスパークを実現するというプロセスを構築することです。

○自社のコア技術を効率的・効果的に発信し、外部の人達の頭を刺激する

そのためには、まずは自社のコア技術を効率的・効果的に発信し、できるだけ数多くの外部の人達の頭を刺激しなければなりません。この「効率的」の部分に関してですが、幸いなことに現在ではインターネットという武器があります。自社のウェブサイト上に自社のコア技術を掲載することで、誰でも、どこでも外部の人達は自社のコア技術の情報にアクセスできるようになります。

しかし、ここで大切な点が、外部の人達は多様であり、またどこにいるのかは未知であるということです。多様というのは、そのニーズの内容、自身のニーズの明確度、業界、担当業務、その技術についての精通度、使用言語、場所などについて、大きなばらつきがあることです。未知というのは、その対象の多様性が現時点ではわかっていないということです。このような未知な多様性に対応できないと、外部で活用できる知識の幅や量は大きく減殺されてしまいますし、むしろより正確に言うと、この未知の多様性を自社のものとすることこそが、ここでの目的です。したがって、この未知の多様性に対応するための工夫が極めて重要となってきます。

次回ではその工夫について、議論したいと思います。

(浪江一公)