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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第151回:オープンイノベーションを成功させる:ビジネスモデルの必要性

(2017年2月27日)

 

セミナー情報

 

これまでオープンイノベーションについて様々な議論をしてきましたが、オープンイノベーションに取り組む日本企業に欠けている重大な問題にビジネスモデルの欠落があります。今回はこのテーマについて議論したいと思います。

●ヘンリー・チェスブローの言葉:ビジネスモデルの必要性

“How do you know what to look for outside, and what to let go to the outside?  Your business model determines the answer to these questions.  You look for ideas and technologies that fit with your business model.  And your internal ideas and technologies that don’t fit are logical candidates to go to the outside.  So the business model is another key element of the open innovation concept.”(「Everything You Need to Know About Open Innovation」 ヘンリー・チェスブロー(Forbes、2011年3月21日))

この言葉は、オープンイノベーションを世界で最初に提唱したヘンリー・チェスブローがForbes誌の中で語っているもので、同氏は、オープンイノベーションにおけるビジネスモデルの重要性を強調しています。

同氏の主張のように、自社のビジネスモデル、すなわち事業展開の型がなければ、外部に何を求め、外部に何を出すかが決まらないということです。例えば、世界中でのオープンイノベーションのロールモデルとなっているP&Gの場合、同社の強みはその製品を市場に広く提供し浸透させるブランド力やマーケティング力にあり、これら強みを拠り所として、市場にアピールする製品を早期に実現し市場に広く提供するのが、同社のビジネスモデルです。このビジネスモデルを使えば、そこにオープンイノベーションにより広く世界から集めてきた新しい技術や製品アイデアに基づき、自社のみでは実現できなかった製品を早期に実現し、それを市場に提供することにより、収益を大きく拡大することができます。

●日本企業に欠けているビジネスモデル

ビジネスモデルという言葉が日本企業の間で使われるようになって随分経ちますが、未だ明確で有効なビジネスモデルに基づき事業展開をしている企業は少ないように思えます。なんでも欧米企業が良いというのはあまりにも単純過ぎかつ誤った議論ではありますが、ことビジネスモデルの重要性の認識は欧米企業の方が先行しているように思われます。そのため、オープンイノベーションにおいて、欧米企業が先行している一つの理由に、このビジネスモデルの有無や明確性があるのではないかと思います。

●ビジネスモデルとは?

一方で、ビジネスモデルという言葉ほど曖昧な言葉はありません。ビジネスモデルという言葉を使って議論していても、その意味することは異なり、議論が噛み合わないということは良くあるものです。このことが示すように、一般的に共有されている明確なビジネスモデルの定義はありませんが、私は以下のようなことが、その意味するところとするのが良いのではないかと思います。

-自社の強みを明確にし、その強みを活用したバリューチェーンおよびサプライチェーンを構築し、そのプラットフォーム上で様々な工夫を行い、事業展開を行うことで高収益を実現する

-同時に、その強みを常に強化し続け、同時に強みでない経営資源は外部を有効に活用する。

●ビジネスモデルとオープンイノベーションは鋳型と鋳物製品の関係

上の定義を見ると、まさにビジネスモデルとオープンイノベーションは表裏を成すもので、オープンイノベーションが鋳物製品とすると、ビジネスモデルはその鋳型(モデル)であることが分かります。

(浪江一公)