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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第119回:企業においてオープン・イノベーションを実現するには?(その5):
自社のコア技術を外部に発信

(2015年11月16日)

 

セミナー情報

 

前回に引き続き、オープン・イノベーションを社内で実現する方法について、議論を続けたいと思います。

●自社のコア技術を外部に発信する理由
それでは、まず自社のコア技術を外部に発信する理由は何なのでしょうか?それは、このメルマガでも以前より議論をしているように、外部の目で自社の存在を見つけてもらい、先方からの自社へのコンタクトを期待するものです。

●コア技術の外部発信対象は多様であることを前提に
コア技術はまだ見ぬ潜在パートナーを対象とするわけで、どのような企業、個人、研究機関が問い合わせしてくるかは事前にはわかりません。というよりも、むしろ多様な対象に積極的にアピールするように外部発信をしなければなりません。そのためには、潜在パートナーは多様であることを前提に情報発信をする必要があります。

コア技術の発信内容を考える場合に考えなければならない多様性の軸は、大きくは3つあると思います。1つは、対象者の技術についての知識レベルです。技術について良く知っているパートナーのみを対象とするわけではありません。むしろ、技術については知らない潜在パートナーにもアピールできるような工夫をする必要があります。技術を良く知っている潜在パートナーであれば、コア技術の多少の内容と自社がパートナーを求めていることを発信すれば、先方の努力で探してくれる可能性がありますが、技術について知らない潜在パートナーはそのようなことは期待できません。

2つ目の軸が、先方の関心度、切迫度です。既に非常に困っていて、積極的に対象技術を探している潜在パートナーと、何か面白い技術があればというレベルの潜在パートナーが考えられます。それにより当然、発信内容や発信媒体に工夫が必要です。前者であれば、先方は積極的にインターネットを使い検索するでしょうが、後者はそのようなことはありません。

それからもう1つの重要な軸が、使用言語です。英語で十分と思うのは早計で、潜在パートナーにはさまざまなレベルが考えられ、英語が分からないパートナーの存在も十分考えられます。多言語、例えば中国語、韓国語、スペイン語と言った言語でも発信する必要があります。中国語も簡体字(中国本土で利用)と繁体字(台湾・香港で利用)の両方を含めるぐらいの、細かい対応が求められます。

●発信情報の視点(アウトバウンドを例に)
上で議論した1つ目の多様性の軸への対応には、以下の視点での情報が必要と思われます。

○その技術のメカニズム
技術について良く知っている顧客は、当然その技術そのものへの関心は大きいと考えられます。具体的に必要な技術を特定し、それをネット検索等で探すことが想定されます。そのために、その技術のメカニズムの特徴を明確に発信する必要があります。

○その技術で実現できる機能
オープン・イノベーションの対象者は多様で、自ら必要技術を特定できるパートナーは限定的であろうと思われます。むしろ、技術は知らないが、その技術で実現できる『機能』を求めているパートナーは多いと想定されます。そのような対象者を前提には、その技術で何ができるのか?すなわち『機能』を発信する必要があります。ここで一点注意しなければならなのが、その技術で実現できる機能は1つではないことが多いということです。したがって、その技術で実現できる『機能』を複数、できるだけ網羅的に考え、それらを発信する必要があります。

○その技術で実現できる製品・サービス用途例
中には機能レベルでの説明だけでもピントこないというステーク・ホルダーもいるでしょう。そのためにも、その技術で実現できる用途例、すなわちその技術で実現できる機能を一歩進めて、その技術(機能)を使って実現できる製品やサービスの用途事例を示すことです。

(浪江一公)