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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第118回:「企業においてオープン・イノベーションを実現するには?(その3):
自らオープンにならなければ、オープン・イノベーションは成功しない」

(2015年11月4日)

 

セミナー情報

 

前回に引き続き、オープン・イノベーションを社内で実現する方法について、議論を続けたいと思います。

●自らオープンにならなければ、オープン・イノベーションは成功しない

オープン・イノベーションは、外部の技術、知識、能力を積極的に活用し、社内の技術、知識、能力と組み合わせ、新たな顧客価値、すなわちイノベーションを実現しようとする活動です。つまりイノベーション実現のために、そのプロセスを社内に閉じる(クローズ)ことなく、外部にも『オープン』にしようという考え方です。しかし『オープン』の意味はそこにとどまりません。自社も自ら外部に対して、その基本姿勢として『オープン』になる必要があります。インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸氏はこんなことを言っています。

「オープンであることは、楽ではありません。望まない議論に疲弊したり、技術やノウハウが流出したりする危険もあります。しかし、閉ざされた密室の中で発想できる未来には限界があるのも事実です。もめたくはないけれど、もまれないと成長できない。」(インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸氏、日経産業新聞(2015年2月20日)

●自らがオープンであるとは:外部から「探される」状況を作る

多くの企業で良くある活動は、オープン・イノベーション部門を設置し、外部の技術や情報を積極的に見つける行動を主体的に行おうとするものです。もちろん、このような活動は重要であり、必要ですが、まさに探索先が国内に閉じることなく、世界中に広がっている現在の状況の中、世界中に存在する技術や有用情報を集めようとすると、社内の活動では限界があります。もちろんこのような社内活動の弱点を外部のナインシグマ等の仲介業者を利用するという手段もあるのですが、すべてをそのような企業に頼ることは、費用の面から、そして更に自社内に自らオープン・イノベーションに関わる能力を構築する必要性があるという視点からは、望ましくはありません。

重要な活動が外部に積極的に「探される」状況を作ることです。そのためには、社内の情報を外部にオープンに開示することです。もちろん、なんでもかんでも自社の情報を開示することを意味するわけではありません。イノベーションを実現することが目的ですので、最終的にイノベーションに至るために必要な自社の情報を開示することです。

●「探される」ためには、何をオープンにするか?

それでは自社の何をオープンにすれば、良いのでしょうか?私は、最低限以下の2つを世の中に広く、かつ継続的に開示するということだと思います。

○自社のコア技術
自社が既存事業の継続的強化や新規事業構築のために、戦略的に強化していこうとするコアとなる技術

○自社の求める技術・能力
今、自社が強化や入手を期待している具体的な技術や能力

それでは次回もこの議論を続けて行きたいと思います。

(浪江一公)