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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第105回:「価値づくりの研究開発におけるオープン・イノベーション」

(2015年4月27日)

 

セミナー情報

 

前々回までオープン・イノベーションの議論をしてきました。前回から本メールマガジンのタイトルを「「価値づくり」の研究開発マネジメント」に変えましたが、オープン・イノベーションの議論を続けたいと思います。今回は、前回のメールマガジンのタイトルの変更のこともあり、「価値づくり」の研究開発におけるオープン・イノベーションの位置付について議論をします。

●「価値づくり」は自社の外から始まる

「価値づくり」の大変重要なポイントが、それが自社の外、すなわち市場から始まるということです。

顧客が現状に全て満足しているということはありません。なぜなら、B2B製品であれば、顧客である企業は常に山積した課題を抱えているからです。課題のない企業などはないでしょう。なぜなら、企業経営はまさに課題解決の連続と同義であるからです。

B2C製品でも同様です。人間の欲望はきりのないもので、現状に満足するということはありません。皆さん、自分自身のことを考えてみればこの点はあきらかです。

B2B製品、B2C製品両者とも、自社が提供している製品やサービスの周辺では課題や追加的な欲求が必ず存在している筈です。

つまり、自社の外、すなわち市場に目を向ければ、「価値づくり」の機会は、常に存在しているということです。これら課題や欲求は、涸れることのない「価値づくり」の源泉です。

そのため、「価値づくり」の研究開発においては、ここを出発点とするのです。

●最適な「価値づくり」を実現するために、自社に経営資源が全て揃っていることは通常ない

しかし、ここでの問題が、新たな「価値づくり」を自社の製品やサービスで実現しようと思えば、全ての経営資源が自社に存在してはいないものです。なぜなら、市場での「価値づくり」の機会は、自社の経営資源とは全く関係なく、そこに存在しているからです。もちろん、自社の経営資源で実現できる範囲での「価値づくり」をするということも、可能かもしれません。しかし、それは自ら、「価値づくり」の機会を大きく狭めてしまうもの以外のなにものでもありません。まさにこの考え方が、従来の「ものづくり」の考え方です。極論すると、自ら保有する経営資源の制約を考えることなく、市場に存在する「価値づくり」の機会に目を向け、ひたすらそこに邁進するのが「価値づくり」の基本的な考え方です。

●オープン・イノベーションは「価値づくり」を実現するための重要な要素

しかし、そうは言っても、その製品やサービスを実現できなければ絵に描いた餅です。

ここで登場するのが、オープン・イノベーションです。オープン・イノベーションは、外部のアイデア・知識、技術、その他の能力を活用して、新た事業や商品を展開しようとする概念です。このオープン・イノベーションは、「価値づくり」の場で、自社の経営資源の欠落を補うという重要な機能を担ってくれます。

●オープン・イノベーションのもう一つの役割

実はオープン・イノベーションは、もう一つの役割があります。新たな「価値づくり」の機会の発見に貢献してくれることです。定常的にオープン・イノベーションの活動を行えば、市場に(潜在的に)存在する「価値づくり」の機会を、より見つけ易くなることです。補完する知識、技術、経営資源を外部で探す活動は、それ自体で、自社の知らない情報や知識を提供し、それらを利用しての新たな「価値づくり」の機会の発見に大きな貢献してくれます。加えて、オープン・イノベーションは、自社の固定的なものの見方を継続的に壊しという、まさにイノベーションの土壌づくりにも役立つという効果を持つものです。

(浪江一公)