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日本企業復活の処方箋「ステージゲート法」

第103回:多様なソースから情報・知識を集める(その18)
情報・知識の『源』を多様化する(17):オープンイノベーション-事業戦略・技術戦略の重要性

(2015年3月30日)

 

セミナー情報

 

今回は、オープンイノベーション実行における、事業戦略・技術戦略の重要性について議論したいと思います。

●オープンイノベーションが実行されない大きな理由

欧米企業では、オープンイノベーションという概念は既に重要な手法として、すくなくともその重要性は経営の中で認識されている感があります。

しかし、日本企業ではまだまだ、オープンイノベーションには市民権が与えられていません。もちろん大企業の一部には、オープンイノベーションの専任部隊を置く等の動きが数年前からみられますが、現実に企業の活動に貢献しているかというと、まだ掛け声だけに終わっているということが多いように思えます。

なぜ日本企業において、オープンイノベーションが積極的に推進されないのか?私は、明確な事業戦略・技術戦略の不在が大きな理由であると思っています。信頼に足る戦略の不在は、日本企業において昔からの大きな課題であり、多くの企業の問題は、元を質せば戦略の不在という課題にあることは多いものです。しかし、私自身安易に戦略の不在に原因を求めることには大きな抵抗感があります。なぜならそれを言うと、他にもやるべきことがあるのに、戦略不在を理由にして思考停止になるという傾向が強いからです。しかし、ことオープンイノベーションが機能しない理由に関しては、この信頼に足る戦略の不在を挙げざるを得ません。

●なぜ事業戦略の不在が、オープンイノベーションが機能しない理由なのか?

ここで言う事業戦略は、事業ドメイン、すなわち自社が対象とする事業領域のことを意味しています。オープンイノベーションはオープンに(広く)、世界中の企業・研究機関・個人を対象にコミュニケーションをしていこうという活動ですので、自社の対象とする事業ドメインが明確になっていなければ、対象の数は増大します。そうすると効果的なコミュニケーションを行おうと思えば、大きな時間、人員とコストが掛ります。オープンイノベーションは、外部に何か面白い技術やアイデアがあれば利用する、という消極的な活動ではありません。積極的に外部にアイデアや技術を求め、その結果最終的には収益に貢献しなければなりません。そのためには、オープンイノベーション活動の対象事業や製品領域を明らかにし、それらについて明確に焦点を当てた質的にも高度な活動が必要とされます。

●技術戦略がオープンイノベーションの実行に必要とされる理由

同様に、オープンイノベーションの効果的な実行には、技術戦略、すなわち自社のコア技術の明確化が欠かせません。コア技術とは、将来に向けて、自社の事業・製品の差別化の拠り所とする技術です。自社のそこには2つの理由があります。

○自社のコア技術を梃子に、オープンイノベーションを推進する
オープンイノベーションは、自社にある何かと外部にある何かを組み合わせてイノベーションを起こそうとするものです。多くの場合、自社にある何かはコア技術です。従って、自社のコア技術を明確にしなければなりません。例えば、3Mのカスタマーテクニカルセンターは、自社の技術(3Mのプラットフォーム技術)を外部に開示して、新たなテーマの可能性を探るための場です。

○コア技術の明確化により強化対象技術を明らかにする
コア技術は未来に向けて強化・活用する技術です。つまり単に使うだけでなく、継続的な強化が必要です。通常コア技術は複数の要素技術から構成され、必ずしも全ての要素技術が自社に揃っている訳ではありません。自社にない場合にはオープンイノベーションを活用して、強化するということもしていかなければなりません。この点からも自社のコア技術の明確化が必要となります。

(浪江一公)