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日本の製造業復活の処方箋「ステージゲート法」

第29回:ゲートの運営(その22):事業評価(17)
「評価の対象となる4種類の技術」

(2013年2月18日)

 

セミナー情報

 

 今回はゲートで評価する技術面の議論をしたいと思います。

■事業で成功する為の技術の評価

 これまでも繰り返してお話をしてきましたが、ステージゲート法は、事業での成功を実現するためのものです。単に技術や製品そのものを実現するためのものではありません。したがって、技術も事業で成功するための視点から評価をする必要があります。

 その為、事業において市場投入後もできるだけ長期にわたり成功を持続するためには、どのような技術が必要かをおさえることが求められます。事業において成功するためには以下の4つの技術が必要になります。

■その1:市場の本質ニーズを充足するための代替技術

 事業で成功するための重要な要件の一つが、市場ニーズを充足することです。市場ニーズを満たす中核となる技術(代替技術)は複数ある可能性があります。例えば、フラットパネルテレビを実現する技術は、プラズマ、液晶、ELなどの技術があります。それら技術全てを捉えて、どの技術が最も市場ニーズを総合的に(コストや信頼性などを含め)満たし、かつ技術の実現可能性が高いのかを分析、把握する必要があります。

■その2:市場の周辺ニーズを充足するための補完技術

 市場ニーズには当然のこと本質的なニーズ(テレビ番組を楽しみたい)以外に様々な周辺ニーズがあります(デザイン、低い消費電力等)。これら周辺ニーズを満たすには、フラットパネルディスプレー以外の様々な技術が必要となります。それら技術を全て理解した上で(加えてそれらにも代替技術がある)、評価をする必要があります。

■その3:必要とする技術を獲得するための技術(攻めの技術)

 「技術」を獲得するための「技術」とは、何のことを言っているのかピンと来ないかもしれません。製品アイデアを事業化するために自社に必要な技術(技術A)を、例えば他社(α社)に特許で抑えられている場合に、その技術(技術A)をクロスライセンス等で獲得するために、今後α社が必要とするような技術(技術B)を自社で開発するという方法があります。つまり、自社の技術の弱み(技術Aを保有していない)を解消するための「攻め」の技術です。

 現在のスピードが速い時代において、全てを自社技術で製品を実現することは、現実的ではありません。しかし、一方で他社から自社が必要とする技術を獲得することができるという保証もありません。一見迂遠に思えるかもしれませんが、このような自社の弱みを解消するための「攻め」の技術まで自社が用意することが、必要となってきています。

■その4:自社製品・事業を延命させるための技術(守りの技術)

 自社が基本特許を押さえたから、押さえる見込みが立ったからといって、安心してはいられません。競合他社が改良特許や関連特許を取得してしまうと、自社が保有する基本特許の権利を実施できなくなってしまう事態も起こりえます。また、特許が切れると自社の技術上の強みが消滅してしまいます。

 その為の長期の視点からも、自社が保有する基本特許に関係する改良特許、関連特許を継続的に開発し、特許による権利化を進める必要があり、このような基本特許の権利を実施する、もしくは延命化するための「守り」の技術も把握しておかなければなりません。

■ここでもフロントローディング

 このようなことは半ば以降のゲートで評価すれば良いことと、考える方もいるかもしれません。思い出してください。ステージゲートの大きな特徴が、フロントローディングです。特に特許に関していうと早いもの勝ちです。また他社に自社の手の内を知られない前に技術を獲得することが、技術を低価格で獲得するみちでもあります。

 したがって、遅くとも開発がスタートする前のゲート3においてはこれら技術を明確にしておく必要があります。

 

(参考文献)
「知的財産戦略」丸島儀一著、ダイヤモンド社