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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第182回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋(29):KETICモデル-知識:外部技術(1)

(2018年5月21日)

 

セミナー情報

 

現在このメルマガでは、KETICモデルの最初の知識(Knowledge)の内、技術の知識の議論をしていますが、今回からは社外の技術知識をどう収集・蓄積するかについて議論していきたいと思います。

●イノベーションを起こすために収集する社外技術知識の収集・蓄積の拠り所の必要性

私は、このメルマガの中でも何度が議論をしてきたように、革新的なテーマを創出するには、技術知識、市場知識そして自社の強みが必要であると考えています。このモデルを前提とすると、自社の強み以外の2つの要素である技術知識と市場知識は、多ければ多い程それら3要素の間でスパークが起きる頻度が高まり、革新的なテーマが数多く創出されることになります。

しかし、多ければ多いと言っても、対象を絞らなければ効率的に知識を収集・蓄積することはできません。知識の収集・蓄積にはその起点となる拠り所が必要です。社外から技術知識を収集し蓄積するには、どのような点を拠り所にすれば良いのでしょうか?

●社外技術知識の収集・蓄積の拠り所:自社のコア技術

技術知識の収集・蓄積の拠り所になるのが、まさに前回まで議論をしてきた自社のコア技術です。自社は今後の展開として、このコア技術を多いに活用してイノベーションを起こすと決めているのですから(それがコア技術設定の目的です)、社外の技術知識の収集・蓄積においてこのコア技術を重要な拠り所とすることは、理に適っています。

自社のコア技術を拠り所にして外部の技術知識を収集・蓄積する活動には、大きくは2つの方向性があります。

その1:自社のコア技術の補完技術

通常革新的な製品を実現するには、自社のコア技術だけでの達成は不可能です。自社のコア技術と外部の何等かの技術のスパークにより、革新的なテーマをスパークにて創出するのです。ですから、一つの方向性が、自社のコア技術との間でスパークを起こし、革新的な製品が生み出されるような外部の技術です。ですので、外部の技術の収集・蓄積となるのは、コア技術とスパークを起こしてくれるような技術です。

もちろん、自社でこのようなコア技術を利用してスパークを起こす機会を社外において探すわけですが、どのような外部技術と組み合わさるとスパークが起きるかを自社の現有の知識や経験だけ探すのでは、その発想が限定されてしまいます。ここに何かしらの工夫が必要です。

その2:自社のコア技術の強化のための技術

もう一つの方向性が、自社のコア技術をより強化するための技術を探すということです。自社のコア技術がより強化されると、すなわち技術の水準が向上し、さらにコア技術を構成する新たな要素技術の知識が得られれば、スパークの頻度は上がることになります。

次回は、「その1:自社のコア技術の補完技術」をどう探すかの工夫や活動について議論したいと思います。

(浪江一公)