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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第180回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋(27):KETICモデル-知識:コア技術(4)

(2018年4月23日)

 

セミナー情報

 

今回の前回に引き続き、コア技術について議論をしていきます。

●コア技術は未来志向で

コア技術設定で極めて重要な点があります。それはコア技術は未来志向で設定するということです。つまり、現状で自社の技術レベルが必ずしも高くなくても、将来自社にとって寄って立つ重要な技術であれば、コア技術に設定するというものです。この点は、多くの企業で認識がなされていない点です。

経営論や経営学の重鎮の主張では、「自社の弱みの解消ではなく、強みを徹底して利用せよ」ということになりますが、私はこの点を文章通り解釈するのは間違っていると考えています。

●なぜコア技術は未来志向で設定するのか?

それでは、なぜコア技術は未来志向で設定するものなのでしょうか?なぜならば、技術は早晩成熟化し、広く産業界にある企業に普及し、自社の独自性の実現が困難になるからです。例えば、日本企業の金型技術水準は、かつては世界的にも極めて高いものでしたが、今では台湾や中国企業の技術レベルも大きく高まり、日本企業のそれを凌駕するレベルに達しています。

したがって、従来の自社の強い技術だけに依存していては、長い期間の中でいつか、経営が根底から揺るがされる状況に陥る可能性は高いのです。

●自社の行く末を徹底して考える

したがって、自社のコア技術が強い内に、次のコア技術を設定して、今から育てていかなければなりません。それではどうしたら次に設定すべきコア技術が見つかるのでしょうか?多くの企業にとって現状のコア技術は、目の前の市場や顧客の要求に必死に食らいついて確立してきたという経緯があるのではないでしょうか?

もちろんそういった展開も今後も必要ですが、それに加えて、自社の行く末を徹底して考え、長い時間軸で自社が継続して成長していくために必要な技術とは何かを徹底して考えることが必要です。なぜなら、目の前の要求の先に明るい未来がある保証はどこにもないからです。

●「自社の行く末を徹底して考える」とは?

ここで言う「自社の行く末を徹底して考える」とは、どのようなことを考えることなのでしょうか?私は、より広い視点を持ち、今後事業としてどのような新たな「顧客価値」を創出し、実現していくのかを考えることであると思います。

例えばGEは従来は、産業機械企業でしたが、今ではサービス企業、例えば有名なジェットエンジンの例で言えば、顧客の顧客である航空会社の航空機の稼働時間を増やすことを、自社の提供するあらたな価値として設定しました。その結果従来の機械や材料の技術以外に、IoTやビッグデータ解析技術が徹底して重要と認識し、今そのような技術をコア技術に設定し徹底して強化をしています。

(浪江一公)