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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第127回:個人のスパーク力をアップする方法(2):もれなく、だぶりなく

(2016年3月14日)

 

セミナー情報

 

前回は、アイデアを創出する活動として隣接可能性を説明しました。それでは、隣接可能性で創出した『粗いアイデア』をどう進化させ『良いアイデア』とすれば良いのでしょうか?

●『粗いアイデア』を進化させる3つの方法
『粗いアイデア』を進化させるには、3つの方法があります。以下に1つ1つ議論をしていきたいと思います。

○構成要素に因数分解する
最初に出される『粗いアイデア』は、多くの場合様々な要素から構成されています。言い換えると、最初に出される『粗いアイデア』は、複数のアイデアが埋もれた、研ぎ澄まされていないアイデアであると言えます。したがって、この『粗いアイデア』を構成要素に因数分解するという作業は、より『良いアイデア』に進化させるために、極めて重要な作業となります。

○『そうでない』アイデアを探す
更には因数分解された『アイデアは、「そうではない」アイデアを考える上での、重要な視点を提供してくれるものです。目にはつまらないかもしれないアイデアでも、「そうではない」アイデアを考える上での重要な拠り所になります。ありきたりのアイデアの創出はそう難しくはありません。しかし、「そうではない」アイデアは、ありきたりではない可能性が高いのです。

○新たな知識・アイデアを付加し、スパークを起こす:すなわち「連想」する
最初に出されたアイデアの全部もしくは一部に新たな知識やアイデアを付加すること、すなわち連想することで、スパークを起こすことも考えられます。したがって、新たな知識やアイデアを予め頭の中に用意しておくことが、スパークの頻度を上げるために重要な要素となります。

●MECE:「もれなく、だぶりなく」
良く議論の整理法にMECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)、すなわち「もれなく、だぶりなく」があります。例えば、日本は何から構成されているかというと、北海道、本州、四国、九州の4つの大きな島から構成されていますが、日本を構成する大きな島に関しては、この4つしかありません(「もれなく」の部分に該当)。その上、これら4つの島には「だぶり」はありません。青森県は北海道にも属しているし、本州にも属している、という構造にはなっていません。

実は、このMECE、「もれなく、だぶりなく」は、極めて優れた発想法でもあります。上で3つの方法を議論しましたが、最初の2つの「構成要素に因数分解する」と「『そうでない』アイデアを探す」を行う方法が、このMECEです。

○MECEで「構成要素に因数分解する」
「構成要素に因数分解する」については、MECEのツリー状の構造に、最初に出された『粗いアイデア』を整理します。ツリーの一番てっぺんに、この『粗いアイデア』が置かれ、その下に、その構成要素が「だぶりなく、もれなく」記述されるという構造です。ここでは、単に整理されるだけでなく、構成要素をツリー状に因数分解する中で、もとのアイデアの中にはない新たな構成要素が追加される可能性が高いのです。

○MECEで「『そうでない』アイデアを探す」
「『そうでない』アイデアを探す」については、MECEの「だぶりなく、もれなく」の構造の中で、「逆ではだめなの」つまり、基のアイデアではない(つまり、基のアイデアとだぶりがなく)、存在する(つまり、上意概念を「もれなく」満たす、同じようなもの)他のアイデアを考えることができるということです。

前回のメールマガジンで、私自身が「隣接可能性」を仕事上多用しているという話をしましたが、実はこのMECEも同様です。私がこうやってコンサルタントとして身を立てていることができる背景には、この2つの考える手法がある故というのは決して誇張ではありません。

(浪江一公)