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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第106回:「オープン・イノベーション推進のドライバーとしての「価値づくり」

(2015年5月11日)

 

セミナー情報

 

前回は、「価値づくり」を実現するためには、オープン・イノベーションが必須であるとのお話をしました。今回はそれ故、逆に、オープン・イノベーションの実現には、経営者の「価値づくり」の重要性の深い理解が必須であるという議論をしたいと思います。

●オープン・イノベーションの意義:「価値づくり」に向けての自社の経営資源の補完

前回の議論の繰り返しになりますが、重要なポイントですので、「価値づくり」におけるオープン・イノベーションの意義を、ここで再度簡単に触れておきたいと思います。

「価値づくり」の起点は市場のニーズにある、すなわち「価値づくりは自社の外で自社の能力とは独立して発生するものであり、その実現のためには自社の経営資源だけでは不十分となる可能性が大きいということがあります。この自社の経営資源で不足しているものを、外部から調達して補完するのが、オープン・イノベーションです。

●オープン・イノベーション推進の抵抗

欧米の先行事例があるために、オープン・イノベーションを積極的に進めようとしている企業は、多いものです。しかし、多くの企業で必ずしもうまくは行っていません。その大きな理由が、研究開発部門からの抵抗です。オープン・イノベーションは、従来では社内で研究開発を行っていた技術を、外部の企業や研究機関の技術で置き換えるのですから、研究開発部門にとっては、自部門の存在意義に挑戦し、それを危うくするものと捉えられても不思議はありません。

しかし、オープン・イノベーション実現においては、研究開発担当者の主体的な関与が必須です。研究開発担当者がオープン・イノベーション推進に前向きに取り組まなければ、オープン・イノベーションはうまくは行きません。

●オープン・イノベーションのドライバーとしての「価値づくり」

このような長年の企業内で共有され強化されてきた価値観、すなわち自前主義が、その実現を邪魔するため、オープン・イノベーションはお手軽に実行できるものでは残念ながらありません。したがって、オープン・イノベーションを実現しようとすれば、このような強固な価値観を壊す大きな変革のドライバーが必要となります。まさにこの変革のドライバーが、「ものづくり」から「価値づくり」への転換です。なぜなら「ものづくり」は「自前主義」と表裏の関係にあると言え、逆に「価値づくり」はオープン・イノベーションと表裏一体の関係にあるからです。

●経営者の「ものづくり」から「価値づくり」へのマインドセットの変革から

したがって、オープン・イノベーションを推進するには、まずは経営者がこの点について自身の認識を新たにし、「価値づくり」の重要性を深く理解することが大前提となります。

それでは、経営者のマインドセットが「価値づくり」にスイッチされたとして、オープン・イノベーション実行にはどのような具体的な活動を行ったら良いのでしょうか?この議論は次回以降にしていきたいと思います。

(浪江一公)