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日本企業復活の処方箋「ステージゲート法」

第100回:多様なソースから情報・知識を集める(その15)
情報・知識の『源』を多様化する(14):オープンイノベーション-まずは情報発信から

(2015年2月16日)

 

セミナー情報

 

前回から、情報・知識を多様化するコンセプトとしてのオープンイノベーションを議論しています。今回も引き続きその議論をしたいと思います。

●オープンイノベーションに向けての主体的活動の限界

オープンイノベーションのコンセプトは前回も触れたように、世界中に散らばる70億人の人達の頭脳を活用することです。もちろん、全ての人が対象になるわけではありません。活用すべき頭脳はこの70億人の中に『散在』しています。したがって、こちらから主体的にその頭脳を探すという手段は、あまり効率的ではありません。そのような活動は藁の山の中から針を探す作業のようなものです。

また、「思わぬ所」から、面白い情報がもたらされ、イノベーションが起きるということもあります。したがって、「思う所」だけを探していては、不十分です(もちろん、そのような活動にも価値はありますが)。イノベーションの研究者であるシュンペーターは、「イノベーションとは新結合だ」と言っています。つまり、イノベーションは無から生まれるのではなく、既存の情報や知識が「今まで存在しなかった」新しい組み合わせで組み合わされることで創出されるということです。「今まで存在しなかった」組み合わせは、「思わぬ所」に存在する可能性が高いので、自社が主体的に探すとなると、必然的に対象を絞ることになりますので、その効果は限定的になります。

それではどのような方法が効率的なのでしょうか?

●効果的な手段:世界中に向けて広く情報発信する

それはこちらから70億人の人達を対象に、情報発信をすることです。基本的にそのような頭脳を持った人達は、その分野には感度の高い人達です。まずはそのような頭脳の関心を引くような情報を常に発信し、自社の存在を知らしめ、向うからこちらにコンタクトをしてもらえるような状況を作ることが効率的です。この面では、インターネットという文明の力は極めて重要で、これなくして、効率的な情報発信は不可能です。

もちろんインターネット以前にも、情報発信の手段はありました。例えば、自社の情報発信の方法としては、学会発表、展示会、自社技術紹介誌、業界誌等の方法はありました。しかし、そのような媒体でリーチできる領域は、限定されていました。また、これらの活動はかなりコストが掛ります。加えて、オープンイノベーションの対象は海外も含めた全世界の70億人の頭脳です。海外も、従来は欧米の一部の主要国を対象としていればよかったものが、途上国にも、その分野での優秀な頭脳が生まれつつあり、また、途上国は有力な市場となっていますので、これらの途上国の頭脳も、重要な活用対象になります。しかし、情報発信の手段として、特に海外の頭脳に向けては、これらの従来の媒体は非力です。

●オープンイノベーションに向けてのインターネットの活用

インターネットの活用と言っても、利用するメディアとしては、オープンイノベーションだからと言って何の特別なものはありません。まずは自社のウェブサイトやメルマガ、SNSを使って、世界中の知を活用したい領域に関する自社の活動を公開することです。それにより、世界の頭脳は検索等を通じて、自社の存在を知り、彼らに関心があるトピックスに関して向うからコンタクトしやすいような仕組みを作っておけば、向うからコンタクトしてきてくれます。

しかし、もちろんこれらを効率的に行うための工夫は必要です。

次回も引き続きこの議論をして行きます。

(浪江一公)