Top
> メルマガ:日本の製造業復活の処方箋『ステージゲート法』

 

日本企業復活の処方箋「ステージゲート法」

第94回:多様なソースから情報・知識を集める(その9)
情報・知識の『源』を多様化する(8):分野軸-非重要顧客: マジョリティ

(2014年11月17日)

 

セミナー情報

 

前回から、『非』重要顧客から情報・知識を集める活動の議論をしています。

情報の活用の面からは『非重要顧客』は、3つのグループ、すなわち、新製品購入時期で区分されるライトハウスカスタマー(もっとも最初に関心を示す層)、マジョリティ(ライトハウスカスタマーやその次に新製品に関心を示すアーリーアダプターの評判を聞いて購入する層・市場の最も大きな部分を占める)そしてラガード(一番最後に購入する層)に分けて考えることができます。今回は、その内のマジョリティについて議論をしたいと思います。

●アーリーアダプターとマジョリティの間に横たわる溝:キャズム
「キャズム」(地面などの裂け目)とは、米国人のジェフリー・ムーアが唱えた概念で、アーリーアダプターとマジョリティの間に横たわる裂け目のことを言い、その裂け目の存在により、多くの製品がアーリーアダプターに採用されながら、売上の大半を占め、それゆえ商業化の成功に欠かせないマジョリティに受け入れられず、失敗することを意味します。つまり、アイデア創出において、マジョリティの顧客に関する情報をいかに集めるかが、商業化・事業化の成功においては極めて重要であるということです。

●マジョリティの情報収集上の顧客の特長
マジョリティには、情報収集の観点から、以下の2つの大きな特徴があります。

○数が多く市場の全体構造の把握が難しい
まず、「マジョリティ」という名前がついているように、市場の大半を占める顧客ですので、数が多いということです。問題は、これら顧客は数が多いゆえ、様々な顧客から構成されていて、マジョリティの全体像を捉えることが難しいのです。それゆえ、自社が対象とすべき市場セグメントはどこなのか、そしてそこでの共通的なニーズが何なのかを見極めることが難しいということがあります。

○自分のニーズが分かっていない
マジョリティは、別名フォロアー(追随者)と呼ばれています。フォロアーは、アーリーアダプター達の購買行動を見て、それに触発されて購入を始める層ですので、自分達の確たるニーズを明確に認識しているわけではありません。したがって、マジョリティに「何か困っていることはありませんか?」という問いかけをしても、明確な答えは返ってきません。

●アーリーアダプターについての効果的な情報を集めるには
○数多くの顧客とコンタクトを持つ
従って、効率は悪いのですが、数多くの顧客とコンタクトをする必要があります。逆に、効率が悪いゆえ、多くの企業がこのような活動をしようとはしませんので、むしろ他社が追随しないような大きな規模で数多くの顧客とコンタクトをすることができれば、他社に対しその能力において差別化をすることができます。このような活動をしている企業に、女性下着メーカーであるワコールがあります。ワコールは、1964年から女性の体形のデータを収集・蓄積しており、今では4万件のデータを持っていると言われています。加えて、その中には同じ女性の体形の経年変化のデータも含まれており、他社がこのようなデータを集めたいと思っても、多数の年数が掛るという意味で、他社に対する能力・資産における模倣困難性を実現しています。

○アイデアをぶつけて反応を見る
マジョリティの顧客には、「何か困っていることはありませんか?」という問いかけではなく、アイデア仮説をぶつけ、そしてて反応を見ることが効果的です。直接のアイデア仮説を得るのはライトハウスカスタマーやアーリーアダプターであり、その仮説を検証する対象がマジョリティになるという関係です。

(浪江一公)