Top
> メルマガ:日本の製造業復活の処方箋『ステージゲート法』

 

日本の製造業復活の処方箋「ステージゲート法」

第38回:ゲートの運営(その31):ゲートミーティングの運営(1)
「評価点は誰がつけるか? 」

(2013年4月22日)

 

セミナー情報

 

これまで、ゲートでテーマの評価の項目について議論をしてきました。今回からはその他のゲートの運営活動に対象を移していきたいと思います。今回は、テーマの評価点は誰がつけるのが良いかについて考えてみたいと思います。

■ゲートの評価点付けて考えるべき3つのポイント
誰がゲートでの評価点付けを行なうべきかを決める際に、考慮しなければならない点が3つあります。

○考慮事項1:プロジェクトチームの過度な楽観への対応
1つ目に、プロジェクトチームは多くの場合自分達のテーマを次ステージに進めたいと思うもので、提出する成果物や彼らが付ける評価点は過度に楽観的になる強い傾向があります。その点への対処が必要です。

○考慮事項2:ゲートキーパーの正しい意思決定に向けての強い責任の自覚の付与
2点目が、上の1点目の理由ゆえに、ゲートキーパーはプロジェクトチームの提案内容から、本当の姿を読み取り正しい意思決定をすることは大変重要です。ゲートミーティングは、プロジェクトチームとゲートキーパーとの間でのまさに真剣勝負の場です。ゲートキーパーはこの点に対し強い責任感を自覚し、ゲートミーティングに臨むようにしなければなりません。

○考慮事項:ゲートミーティングの効率性
3点目は、そうは言っても、経営陣であることが多い多忙なゲートキーパーが、1つのテーマに投入できる時間は限定され、効率的なミーティングの運営にも考慮しなければなりません。

■3つの評価点をつける体制のオプション
誰が評価点付けをするかについては、以下3つの代表的なオプションがあります。

○オプション1:プロジェクトチーム自己評価+ゲートキーパーによる再評価
1つ目が、プロジェクトチーム側自らが評価点付けを行い、その後ゲートキーパーがその評価に対しプロジェクトチームが提出する成果物やゲートミーティングでのプレゼンに基づき再評価を行い、必要に応じて評価点の修正を行なうオプションです。

○オプション2:ゲートキーパーによるゼロベースでの評価
2つ目が、プロジェクトチームは自らの評価点付けは行なわず、ゲートキーパーはプロジェクトチームが提出する成果物とゲートミーティングでのプレゼンに基づき、ゼロベースで評価点付けをするものです。

○オプション3:事務局による評価点付け+ゲートキーパーによる再評価
3つ目が、第三者である事務局がプロジェクトチームの成果物やその他自分達で独立して行なう調査等に基づき評価点付けを行い、その結果をゲートキーパーに提出し、その後ゲートキーパーがその評価に対し、再評価を行なうものです。

■3のオプションの評価
以上の3つの体制オプションを、冒頭の「ゲートの評価点付けて考えるべき3つのポイント」に照らし合わせ、評価したいと思います。

○オプション1:プロジェクトチーム自己評価+ゲートキーパーによる再評価
このオプションを上の3つの考慮事項から○×△で評価をすると以下となります。
考慮事項1:×
プロジェクトチームの自己評価を出発点に評価をしますので、ゲートキーパーが再評価はするものの、前者のバイアスが残る可能性があります。
考慮事項2:△
オプション3に比べ、第三者が介在しないので、第三者の評価に依存するという問題はありませんが、それでもオプション2と比較し、評価点付けで他人(プロジェクトチーム)まかせになってしまう可能性もあります。
考慮事項3:○
事前に議論のたたき台となるプロジェクトチームによる評価点がありますので、ゲートキーパーはそれからの差分を考えることで、効率的にテーマの評価ができます。

○オプション2:ゲートキーパーによるゼロベースでの評価
考慮事項1:○
ゲートキーパーがゼロベースで評価しますので、プロジェクトチームの楽観性は、評価の根拠がプロジェクトチームの成果物やプレゼンではあるものの、比較的排除しやすいと思います。
考慮事項2:○
他のオプションに比べ、前提となる評価点がありませんので、ゲートキーパーは強い責任感を持って評価点付けに臨むようになります。
考慮事項3:×
事前に評価点については何も用意されていないので、ゲートキーパーがゼロベースで評価点付けをするには、とまどいも存在します。

○オプション3:事務局による評価点付け+ゲートキーパーによる再評価
考慮事項1:○
第三者が評価点付けを行いますので、問題はありません。
考慮事項2:×
第三者が評価点付けを行なうことで、ゲートキーパーの責任感が減退する可能性があります。
考慮事項3:○(オプション1と同じ理由)

■まとめ
上での評価のように、それぞれのオプションには一長一短があります。しかし、私はステージゲート法にではゲートキーパーが最終的な意思決定者として大変重要な役割を担いますので、その責任に向けての自覚が重要であるという理由で、オプション2が良いのではないかと考えています。考慮事項3で指摘した「とまどい」は、とまどうこと自体が重要で、とまどうことがなければ、ゲートミーティングではセレモニー的に表面的な議論だけで意思決定がされてしまう危険性は大きいのではないでしょうか。