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日本の製造業復活の処方箋「ステージゲート法」

第10回:ゲートの運営(その3):準備評価(1)

「プロジェクトメンバーのコミットメントの確認と強化手段としても」

(2012年10月1日)

 前回(第9回)は、ゲートでの評価には、「準備評価」、「事業評価」そして「優先順位付けと経営資源配分」の3種類があるとお話しました。今回は、ひとつ目の「準備評価」について、議論をしたいと思います。

■「準備評価」の背景

 ゲートでは、プロジェクトチームが提出した評価の前提となる資料(成果物)に基づき、当該プロジェクト(テーマ)を評価するわけですが、そもそもその資料の内容に信頼性がなければ、後の評価は無意味です。この点はあまり議論の対象にはなりませんが、ステージゲートプロセスを形骸化させないためには極めて重要なポイントです。

■「準備評価」の方法

 このような背景があり、「準備評価」では、資料(成果物)の内容に信頼性があるのかどうかをきちんと評価するものです。

 しかし、それぞれのデータの信頼性を個別に評価することは実質的に不可能ですし、そもそもプロジェクトチームの責任感の醸成の面から不適切です。また、ゲートミーティングの限られた時間の中で、議論に入る前の前提の部分に長い時間を費やすことは効率的ではありません。

 きちんとデータの信頼性を担保しながら、効率的に準備評価を進めるために、2つの評価を以下の方法で進める採ることをお薦めします。

1. プロジェクトチームによるデータの信頼性についての自己評価
2. その自己評価の前提となる活動のポイントの評価

■1. プロジェクトチームによるデータの信頼性についての自己評価

 プロジェクトチームは、自らが中止ややり直ししたい強い理由がない限り「信頼性はある」と自己評価することは明らかです。したがって、評価の意義は、評価をして信頼性が低いテーマの差戻しをするということ自体にあるのではありません。むしろプロジェクトチームに自己評価、すなわちデータの信頼性があることに対し「宣誓」をしてもらうという仕組みの存在により、データの信頼性を担保するということです。事前にこのような「宣誓」を行わなければならないということが分かっていれば、プロジェクトメンバーは当該ゲートに向けての活動(つまり前のステージでの)の中で、データの信頼性実現において大きな関心を持つ筈です。

 この自己評価については、実際にはゲートキーパーへの提出資料(会社にとって重要な提案書)に、プロジェクトリーダーおよびメンバーにサインをしてもらうことが良いと思います(したがって、成果物の表紙は契約書の体裁をとる)。

■儀式としてのプロジェクトメンバーによる成果物へのサイン

 加えて、プロジェクトチームがこの「提案書」にサインする時には、それなりの感慨を持ってサインをすることになるでしょう。プロジェクトの最終成果への期待や確信、自分達の熱意の発露、承認への祈り、これまでの活動の達成感、そして反省といったものです。大げさに言えは血判状です。このようにプロジェクトメンバーによるサインは、データの信頼性の担保という目的以外にも、今一度プロジェクトに対峙し、自分のコミットメントを確認しそれを高めるという効果があります。つまりサインは重要な儀式です。したがって、細かい点ですが、一瞬で終わってしまう捺印だけではなく、捺印より時間が掛かり、かつ自分自身の名前を書くというプロセスであるサインが良いと思います。

 このようにステージゲートプロセス全体を通じて、プロジェクトメンバーの士気を高める工夫を埋め込むことが極めて重要となります。この様に、ステージゲートの本質は、単にステージとゲートのあるプロセスという外見にあるのではなく、ステージとゲートの活動に様々なプロジェクトを成功に導く工夫が組み込まれているものです。